カエサルのいうとおり(人はなぜ偽造カードを買ってしまうのか)。
先日、不幸なことにまたネット上での偽造カード販売詐欺事件が起こりました。
マジック界には偽造カードが存在しており、個人売買には偽造カードを掴まされるリスクがあることは周知の事実です。
また販売者は曰く付きの人物であり、カード画像からも「粗悪な偽造カードである」と多くの人が指摘して警鐘を鳴らしていました。
にもかかわらず。
複数の人物が被害に遭った。
今回の一件は巧妙な詐欺事件のそれではありません。一般的な常識と知性を持った大人なら、いや、もっと率直に言えば、中学生ですら引っかかるとは思えない。
そうは言っても、現にこの手の安易な偽造カード販売詐欺被害は後を絶ちません。
「なんでこんなミエミエの詐欺に引っかかるんだ?」と不思議に思う人も多いかと思います。
なぜこの手の被害者は、偽造カードを買ってしまうのでしょうか?
彼らの知性が中学生以下だから?
違います。
彼らとて、自分が買うカードが絶対に本物だと思って買っているわけではないはずです。
では、なぜ買ってしまうのか?
それはひとえに、彼らが「『このカードは本物だ』と信じたがっている」から、です。
「本物だと思う」と「本物だと信じたがっている」は似ているようでまるで違います。
前者は「判断=理屈」に起因するものであり、後者は「願望=感情」によるものだからです。
そして、人間は感情の生き物です。
「本物だと信じたい」という感情を抱いている人間に対して、「○○という点から偽物である」という理屈で対抗しても、残念ながら効き目はありません。「犬が好きだから飼いたい」という人間に「犬は散歩が大変だから猫にした方がいい」と言っても効果がないのと同じです。
これは偽造カード詐欺に限らず、他の詐欺(マルチ商法、エセ健康食品、カルト宗教等)であっても構造は同様です。
詐欺以外でも、例えば近年の禁止カード頻出に対するウィザーズ叩きにもこの構造は当てはまります。
ウィザーズを叩いている人たちは、「『本来、ウィザーズにはテストプレイによって環境を健全に保つ力があり、現状の禁止カード頻出は新社長による利益第一主義の結果である。よって、ウィザーズおよび新社長を叩いて利益第一主義を改めさせれば、旧来の健全な環境が戻ってくるはずである』と信じたがっている」わけであり、だからこそ、「事はそう単純ではない」とデータを示して理屈を解いても、彼らは聞く耳を持たないわけです(まあ信じたい気持ちはわかりますが……)。
こういった構造を、カエサルは2000年以上前に的確に言い表しました。
曰く「人は見たいものしか見ない」。
さすがに偉人は違いますね。
では、偽造カード詐欺に遭おうとしている人の目を覚ますにはどうすればいいのでしょうか?
残念ながら、目を覚ます方法はありません。
あなたがその人物の無二の親友ならブン殴るなりでどうにかできるかもしれませんが、せいぜいネット上の知り合い程度であれば、できることはないと言っていい。下手に止めようものなら関係を悪化させる危険性すらある。
感情の前に理屈はあまりに無力です。悲しいですね……。
できることと言えば、騙された後に優しくしてあげることくらいでしょう。
偽造カード詐欺に遭う人は元々騙されやすい人でしょうから、たかが数万円で社会勉強ができたと思えばラッキーかもしれません。
少なくとも、騙された人を馬鹿にするのはやめましょう。騙された人は金銭面に加えて精神面でもダメージを負ってるわけで、何も傷口に塩を塗りこむ必要はないですからね。
スタンダードを救う(かもしれない)たったひとつの冴えたやり方。
皆さんご存じの通り(そして予想通り)、本日《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止されました。
「マジックは禁止カードがほぼ出ないから安心してカードを買える」という安全神話は今や昔。近年では頻繁な禁止やルール変更が常態化しています。
その主な要因は、平均カードパワーの上昇と、MTGアリーナによる環境解析速度の急激な上昇。
前者は、強力なカードを求める我々ユーザーの声に応えた結果ですし、後者は、開発側の人的時間的リソースを踏まえると、プレイテストではバランス調整に限界がある。
どちらもTCGが本質的に抱えている構造的欠陥であり、ちょっとやそっとのことでは抜本的解決は望むべくない。
となると、今後も現状のような禁止常態化が続いていくことになります。ですがそれは、メーカーにとっても、我々ユーザーにとっても喜ばしいことではありません。
この問題に対し、現状を打開する画期的なソリューションはないのだろうか?
そんな風に考えていたとき、ふとひらめきました。
「スタンダードにも7ポイントハイランダーのポイント制度を導入すればいいのではないか」と。
大半の方がご存じないと思うので、まずは7ポイントハイランダーについてご説明します。
7ポイントハイランダーはエターナルフォーマットの一つ。オーストラリア発祥で、オーストラリアではEDHより盛んなようです(公式サイトは→ 7 Point Highlander。youtubeに対戦動画が色々あります)。
フォーマットのルールは以下の通り。
・対戦は一対一。
・デッキ60枚のハイランダー戦(基本土地以外の同名カードは1種類につき1枚)。
・禁止カードはヴィンテージ準拠。
これだけ見ると、ヴィンテージのようにパワー9が乱れ飛ぶゲームを想像しますが、そうはなりません。
その理由は、フォーマット名にもなっている「7ポイント制度」。
7ポイントハイランダーでは、パワー9やレガシー級の強カードには1~4点のポイントがつけられていて、デッキには合計で7点までのカードしか入れられません。
具体的にはこんな感じ(1点は省略)。
4点:Ancestral Recal Black Lotus Time Vault Time Walk
3点:emonic Tutor Imperial Seal Mox Emerald Mox Jet Mox Pearl Mox Ruby Mox Sapphire Sol Ring Thassa’s Oracle Vampiric Tutor
2点:Channel Dig Through Time Flash Mana Crypt Mind Twist Mystical Tutor Protean Hulk Strip Mine Tinker Tolarian Academy Treasure Cruise True-name Nemesis
見てもらえばわかるように、最強の4点カードはデッキに2種類積めません。アンリコを積んだら3点のカードは1枚しか積めない。Time Vaultのような強コンボパーツを積むと各種教示者が積みづらい。という風に、「デッキに合ってる強いカード全部乗せ」ができないシステムになっています。
この制度をスタンダードに導入するのです。
例えば、仮にデッキのポイント合計を20点までにする。そして、特定のカードに以下のような点数をつける。
・王冠泥棒、オーコ 5点
・ウーロ 4点
・創造の座、オムナス 3点
・むかしむかし 2点
・ガチョウ 1点
・意地悪な狼 1点
(あくまで仮の点数です。他にも色々なカードに点数をつけます)
こうすることにより、オーコを4枚積みした時点で、デッキにあっているウーロもむかしむかしもガチョウも狼も積めません。3枚積みだとガチョウ4枚は積めますが、ウーロやむかしむかしや狼は積めない。
オーコを一切積まないとしても、ウーロとオムナスを両方4枚は積めません。デッキにあっている強いカードを全部入れることはできず、取捨選択を行う必要が出てきます。
このポイント制度の利点は、禁止のように「オールorナッシング」ではないことです。どれほど強力カードであれ、ポイント設定を高くすることで、バランスを取ることができる。また、環境において、特定の色の組み合わせ(近年ならシミック)に強いカードが集まっても、問題が起こりづらい。
さらに、同一アーキタイプでも固定スロットが生じづらくなり、「何を採用するか(しないか)」で個性が出ます。デッキの多様性も増える。多様性が増えれば環境最適解が出るまでに時間が掛かるのも好ましい。
FNM等のカジュアルな大会であれば、「一番ポイントが低かったで賞」を用意して、カジュアルプレイヤー(あるいはファンデッカー)に楽しみを与えることもできます。
難点を挙げるとすれば、各カードのポイント設定の難しさでしょう。
どれにポイントを設定するか、何点にするかで環境は大きく変わります。
ただ、禁止とは違い、ポイント設定に多少のミスがあったとしても、そう大きく問題にはならないかと思います。前述の通り「オールorナッシング」ではないからです。
定期的、例えば二週間に一度ポイント改訂のタイミングを用意すれば、ほどよくバランスが取れるような気がします(この辺りは、実際に手探りでやってみるしかないでしょうが)。
もうひとつは、周知性の難しさ。
ポイント合計をチェックしてデッキを組むのは初心者にはハードルが高いでしょうし、「たまにFNMに出る」くらいの人だと、大会に参加しようと思ったらデッキが使えなくなっていた、という事態が起こりえます。
「こんなことをするくらいならナーフ(カードを弱体化させるエラッタ)で対応した方が早い」と思う人も出てくるでしょう(個人的にはナーフには反対ですが。他の問題が色々と出てきますし)。
とまあ、ポイント制度の利点と欠点はこんなところでしょうか。
マジック史上例を見ない大きなルール変更なので、現実問題として採用は難しいとは思います。
ただ、現状を鑑みれば、これくらい大きなルール変更を行わない限り、ユーザーから不満のでない健全なゲーム環境を構築するのは難しいのではないか、とも思います。
というか、日本でも7ポイントハイランダー流行りませんかね……。ポイント制度のおかげで禁止がヴィンテ準拠なのにパワー9を揃える必要がない(例えば「アンリコだけ積む」ことに合理性がある)ので、「パワー9揃えるのはキツいけどアンリコは打ちたい」みたいな人にうってつけだと思うのですが。
お詫び。
「ブログの記事をプロの記事の翻訳だと騙るのは不誠実だ」というご指摘があったため、該当記事を削除致しました(過去の記事に関しましても、偽翻訳とわかるよう修正を加えました)。不愉快な思いをさせてしまった方々には謹んでお詫び申し上げます。
「最強の統率者は誰か?」あるいは「真のEDHの幕開け」(中編)
(これは中編です。前編を読んでない方はこちらからどうぞ)
さて、続いて紹介するジェネラルは――と、その前に一つだけ。
前編の内容について、読者の方からあるご指摘がありました。というのも、「最弱ジェネラル」と評した《Ramosian Commander / レイモス教の団長》に、「ループ・ジャンクション」と呼ばれる無限コンボが搭載ができるとのこと。
えっ、マジで!?
さすがに無限コンボをスルーするわけにはいかないので、ここで改めて取り上げることにします。
まずは「ループ・ジャンクション」の紹介からいきましょう。
この無限コンボを構成する鍵となるのはこのレベル。
クリーチャー — 人間(Human) レベル(Rebel)
特別工作班が呪文や能力の対象になるたび、それはターン終了時まで+0/+3の修整を受ける。
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さらに、以下の二枚。
クリーチャー — コー(Kor) ノーマッド(Nomad) 兵士(Soldier)
(0):あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とする。このターン、コーの遊牧民に与えられる次のダメージ1点は、代わりにそれに与えられる。
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クリーチャー — コー(Kor) クレリック(Cleric) シャーマン(Shaman)
(0):あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とする。このターン、コーのシャーマンに与えられる次のダメージ1点は、代わりにそれに与えられる。
(1)(白):クリーチャー1体を対象とする。このターン、あなたが選んだ発生源が次にそれに与えるダメージは、代わりにコーのシャーマンに与えられる。
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コンボの手順はいたって簡単で、まずは対象に取られるたびにタフネスが上がる《特別工作班》を、0マナでクリーチャーを対象に取れる《コーの遊牧民》or《コーのシャーマン》で無限に対象に取ります。
そうしてタフネスが無限に上がった《特別工作員》を、《Worthy Cause / 価値ある理由》《Animal Boneyard / 獣の墓場》《Diamond Valley》等、「生贄に捧げたクリーチャーのタフネス分ライフを得る」カードで無限ライフに変換するだけ。
無限ライフを得れば、その時点で無限(or統率者)ダメージかライブラリー切れ以外の負けはなくなります。
あとは、コントローラーのライフ分のパワー等を持つ《セラのアバター/Serra Avatar》《Evra, Halcyon Witness / ハルシオンの目撃者、エヴラ》等で殴ったり、ライフが一定以上だと勝利できる《Test of Endurance / 忍耐の試練》《Felidar Sovereign / フェリダーの君主》で終わり。
このコンボ、各パーツが単体では非常に弱く、勝ち手段まで含めると3枚必要ですが、見た目に反してかなり強そうです。
というのも、鍵となる《特別工作班》はレベルなのでジェネラルでライブラリーからサーチして場に出せますし、《コーの遊牧民》《コーのシャーマン》は、マナコスト1を手札に持ってこれる《Ranger of Eos / イーオスのレインジャー》《Ranger-Captain of Eos / イーオスのレインジャー長》や、タフネス2以下の生物を手札に持ってこれる《Recruiter of the Guard / 護衛募集員》でサーチできます。
また、コンボパーツである《Animal Boneyard / 獣の墓場》《Test of Endurance / 忍耐の試練》はエンチャントなので、《Enlightened Tutor / 悟りの教示者》《Idyllic Tutor / 牧歌的な教示者》《Plea for Guidance / 導きの嘆願》《Academy Rector / アカデミーの学長》でサーチ可能。
というふうに、「各パーツの種類が豊富」かつ「サーチカードの数も多い」とくれば、コンボパーツを揃えるのは比較的容易なはず。これが「かなり強そう」と判断する理由です。
(※パーツの片割れに《Outrider en-Kor / コーの先導》がいるのを忘れていました。ダメージ移し変え能力を持つレベル。つまり実質ジェネラルだけでパーツ二枚揃います。さすがに強い!)
(ネタキャラ枠と思わせて後から評価が爆上がりする男。「真のEDH」界の梶原修人)
さて、「ループ・ジャンクション」コンボを搭載するのですから、デッキ全体もそれにあわせるべきでしょう。
レベルは《特別工作班》と、除去られた彼を回収できる《果敢な勇士リン・シヴィー/Lin Sivvi, Defiant Hero》だけで十分。
勝ち手段がライフ絡みなので、ライフゲインを軸にするのが一番かと思われます。
となればまず候補に挙がるのが、「ソウルシスターズ」で使われるカードでしょう。
クリーチャーが場に出る度にライフゲインできる《Soul Warden / 魂の管理人》《魂の従者/Soul's Attendant 》等や、自身も魂絆を持ち、ライフによってサイズアップする《Serra Ascendant / セラの高位僧》、ライフゲインのたびにサイズアップする《Ajani's Pridemate / アジャニの群れ仲間》辺りです。
当然、各種アジャニも採用です。奥義でライフ数分の2/2トークンを出せる《Ajani, Caller of the Pride / 群れの統率者アジャニ》、
小マイナスでマナコスト2までの生物をリアニメイトできる《Ajani, Adversary of Tyrants / 暴君への敵対者、アジャニ》、小マイナスで《アジャニの群れ仲間》を生み、ライフさえ多ければプラスマイナス0で対戦相手の全生物と全アーティファクトを追放できる《Ajani, Strength of the Pride / 群れの力、アジャニ》はデッキと相性抜群です。
また、コンボパーツを除去から守るカードもほしいところ。《Mother of Runes / ルーンの母》《Giver of Runes / ルーンの与え手》《Devoted Caretaker / 献身的な世話人》《Reverent Mantra / 恭しきマントラ》等のプロテクション付与は基本として、全体除去からリカバーできる《Second Sunrise / 第二の日の出》《Faith's Reward / 信仰の見返り》(一ターン限定の《Rally the Ancestors / 先祖の結集》)等が有効そうです。
そして忘れてはならないのが、テーロス魂還記で新たに誕生し、パイオニアでも活躍中の、《Heliod, Sun-Crowned / 太陽冠のヘリオッド》《Walking Ballista / 歩行バリスタ》(《Triskelion / トリスケリオン》)の無限ダメージコンボ。
このコンボ、お手軽2枚コンボなので、基本カジュアル環境である「真のEDH」では雑に搭載するのはためらわれますが、ライフゲインデッキとあれば話は別。
《Walking Ballista / 歩行バリスタ》は《Ranger of Eos / イーオスのレインジャー》《Ranger-Captain of Eos / イーオスのレインジャー長》《Recruiter of the Guard / 護衛募集員》、《Heliod, Sun-Crowned / 太陽冠のヘリオッド》は《Enlightened Tutor / 悟りの教示者》《Idyllic Tutor / 牧歌的な教示者》《Plea for Guidance / 導きの嘆願》《Academy Rector / アカデミーの学長》でサーチできる点も見逃せません。
《歩行バリスタ》《トリスケリオン》は「接死&絆魂」付与の《Basilisk Collar / バジリスクの首輪》と相性がよく、そこに《Archangel of Thune / テューンの大天使》が加われば《太陽冠のヘリオッド》がいなくても無限ダメージが成立します。
(発売前から話題になった2枚コンボ。他にヤバい輩がいるので、ひとまず禁止はなさそう)
と、二種類の無限コンボを搭載したこのデッキですが、実はとんでもない問題点があります。というのも、あまりに強すぎる可能性があるのです。
上でも書いたとおり、この記事では基本的にカジュアルEDHのつもりでデッキを組んでいます。10段階のパワーレベルでいうと、せいぜい4~6。よってジェネラルと無関係な無限コンボは、あえて採用していません。
今回はジェネラル絡みの無限コンボが搭載でき、さらにそれがライフゲイン関係だったことで、ヘリオッド&バリスタのお手軽2枚コンボが自然に採用できてしまいました。そしてコンボパーツのサーチ手段も多い。これでは毎回あっさり無限コンボが決まってしまう可能性があります。
これはカジュアルEDHとしては、由々しき事態です(あくまで個人の意見です)。
よって、もし仮に「真のEDH」を楽しみたい場合、《太陽冠のヘリオッド》はともかく、《歩行バリスタ》(《トリスケリオン》)は抜いた方がいいかもしれません(まあやろうとする人がいたらの話ですが……)。
今回の件からわかるように、私はそれほどEDH(古いカード)について詳しい人間ではありません。また、各統率者について、適したカードやコンボを徹底的に調べて書くのは、時間的にも分量的にさすがに厳しい(なにせ13体いますからね……)。
というわけで、この記事を読んで「このジェネラルには○○というコンボ(カード)が入る」というような情報がありましたら、ツイッター等でどんどんご指摘いただければ幸いです。
さて、それでは気を取り直して最強候補の紹介を続けていきます。
エントリーNo.7《Zhalfirin Commander / ザルファーの指揮官》
クリーチャー — 人間(Human) 騎士(Knight)
側面攻撃(側面攻撃を持たないクリーチャーがこのクリーチャーをブロックするたび、ターン終了時まで、ブロックしているクリーチャーは-1/-1の修整を受ける。)
(1)(白)(白):騎士(Knight)クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+1/+1の修整を受ける。
2/2
7番目の統率者は、これまた白単統率者となる彼。
ミラージュ初出で、再録も時のらせんだけですので、最近のプレイヤーはまず見たことないでしょう。
というか、側面攻撃すら知らないはず。いやあ、懐かしいですねえ、側面攻撃。
側面攻撃はミラージュ固有のキーワード能力で、ミラージュの騎士は(確か)全員持っていました。
戦闘時にマイナス修正を与えるのは、すばやく相手の横に回りこむイメージでしょう。真横から攻撃することで本領を発揮させないわけですね。
キーワード能力としてはシンプルかつ強力なので、再登場してもいいと思うのですが、マロー曰く「側面攻撃を持つクリーチャー同士では誘発しない」点がわかりづらいのがネックらしく、今に至るまで(統率者セット以外では)再登場していません。
ちなみに、このマイナス修正は対象を取らないため、なんと、かの《True-Name Nemesis / 真の名の宿敵》にブロックされた際は一方的に討ち取ることができます! まあそんな局面、レガシーを10000マッチやって1回あるかないかだと思いますが。
(典型的なカードデザインの失敗例。こいつをデザインした人は「多人数戦で強い」と思っていたそうです。《正気泥棒》に正気を奪われていたのでしょうか?)
ジェネラルとしての評価はというと……正直、どうしようもないですね。一応、騎士シナジーはありますが、ロード能力ではなく単体強化ですし、本体も小粒で殴りジェネラルにも向きません。
組むとすれば騎士デッキですが、騎士デッキなら後から紹介する《Wintermoor Commander / 冬荒野の指揮官》の方が白黒二色のためはっきり強い。
なので、せいぜい天使等の白系ファンデッキくらいしか組みようがなさそうです。残念。
(統率者2016で久々に帰ってきた側面攻撃持ち。イラストはめちゃくちゃかっこいい)
エントリーNo.8《Rushblade Commander / 急襲刃の司令官》
クリーチャー — アズラ(Azra) 戦士(Warrior)
あなたのチームがコントロールしている戦士(Warrior)は速攻を持つ。
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8番目の最強候補で、ようやく二色ジェネラルの登場です。
初出は多人数戦セットのバトルボンド。「チーム」という見慣れない単語は、多人数戦セットならではでしょう。バトルボンドのリミテッドをやっていた人なら、彼女(フレーバーテキストの口調からすると女性)を覚えているかもしれません。
さて、その彼女の種族タイプですが、なんとアズラ!
ご存知ですか、アズラ。
私は知りませんでした。というわけで、MTGwikiをコピペします。
ケイレム/Kylemに暮らす人型の知的種族。肌は紫色で、頭部に生えた二対の角が特徴。彼らの遠い祖先は悪魔である。頭部の角がこのことを物語っているが、危機を感じると、彼らの顔は真に悪魔的な形状へと変化する。
富、味わい、策略がアズラの主要な関心事である。彼らは場内と場外、両方の「競技」を求めて武勇の場/Valor's Reachに殺到する――他人の財布を軽くするのは、試合を観戦するのと同じくらい楽しいことなのだ。アズラは金色に輝くものを愛し、富を見せびらかすことを恐れない。そのため大抵のアズラは商人となるが、手っ取り早い稼ぎを求めてならず者や暗殺者、傭兵になる者もいる。
「ザ・赤黒」という感じの種族ですね。アズラは全部で七対しかいないので、能力からしても戦士デッキにするのが自然かと思われます。殴りジェネラルに向かないので、これまた横並べからの全体強化、それも赤黒というカラーを生かして前のめりなデッキにするのがよさそうです。
まずは戦士のコストを減らす《Brighthearth Banneret / ブライトハースの旗騎士》。
ロード能力持ちでは、+2/+2修正の《Lovisa Coldeyes / 冷眼のロヴィサ》や自身が攻撃時に+1/+1修正の《Blaring Captain / 吹鳴する隊長》、+1/+0(反転すると+3/+0)修正の《Instigator Gang / 扇動する集団》などが第一に考えられます。
喊声持ちの《Goblin Wardriver / ゴブリンの戦煽り》《Hero of Oxid Ridge / オキシド峠の英雄》《Kuldotha Ringleader / カルドーサの首謀者》も入れておきたいところ。また、《Torbran, Thane of Red Fell / 朱地洞の族長、トーブラン》や、反転すると赤の発生元がプレイヤーに与えるダメージに1点追加する《Akki Lavarunner / 悪忌の溶岩走り》も採用するべきでしょう(色々戦士以外が混じっていますが)。
横並べ手段としては、お馴染みの《Goblin Rabblemaster / ゴブリンの熟練扇動者》《Legion Warboss / 軍勢の戦親分》《Krenko, Tin Street Kingpin / ブリキ通りの重鎮、クレンコ》辺り。
芸達者系では、全体に威迫を与える《Blood-Chin Rager / 血顎の憤怒鬼》に始まり、相手の生物死亡時に2/2トークンが出る《Kalitas, Traitor of Ghet / ゲトの裏切り者、カリタス》、相手がアタック時に3マナ払わないと3/3トークンを出す《Kazuul, Tyrant of the Cliffs / 崖の暴君、カズール》、督励で追加コンバットの《Combat Celebrant / 戦闘の祝賀者》、ブロッククリーチャー数分のダメージを与える《Carnage Gladiator / 殺戮の剣闘士》、攻撃時に他の攻撃クリーチャーのコピートークンを生む《Flamerush Rider / 炎駆の乗り手》、そのターン中に死亡した自軍生物を全リアニメイトする《Garna, the Bloodflame / 血の炎、ガルナ》、自軍生物が死亡するたび対戦相手に生贄を要求する《Butcher of Malakir / マラキールの解体者》等、よりどりみどりです。
置物系は、全体のパワーを上げる《Goblin Oriflamme / ゴブリンの軍旗》《War Horn / 戦の角笛》《Ferocity of the Wilds / 僻境の暴虐》《Orcish Oriflamme / オークの軍旗》《Street Riot / 街頭暴動》辺りが基本。
中でもオススメは、戦士がダメージを与えるたび1ドローできる《Raiders' Spoils / 略奪者の戦利品》と、暴勇時のみ自分が与えるダメージが二倍になる《Anthem of Rakdos / ラクドスの頌歌》で、それぞれアドバンテージ面とダメージ面での働きが期待できます。
装備品としては《Embercleave / エンバレスの宝剣》がデッキのイメージに合っていますし、強そうです。
最後に、戦士を語る上で絶対に外せないのが《Barktooth Warbeard》です。彼はレジェンド初出の伝説のクリーチャーで、いわばマジック界最古の戦士の一人。
敬意を表して画像で紹介しましょう。
テキスト欄に何か色々書いてありますね。私は英語が苦手なのでよくわかりませんが、なにしろ7マナで伝説ですから、さぞやすごい能力なのだと思います。
ちなみに、レジェンドの伝説のクリーチャーは思わぬ高値がついていたりしますが、彼は晴れる屋で150円でした。リーズナブルなお値段なので是非ともデッキに入れたいところです。なんといっても箔がつきますから。
強さとしては、それなりといったところでしょうか。二色なのでカードの選択肢が多く、デッキに合った無限コンボも探せばある気がします。
ひとまず戦士デッキにしましたが、アズラの祖先が悪魔なので、デーモンデッキにするのも楽しいでしょう。最近では《Vilis, Broker of Blood / 血の取引者、ヴィリス》《Kothophed, Soul Hoarder / 魂の貯蔵者、コソフェッド》《Razaketh, the Foulblooded / 穢れた血、ラザケシュ》等、強力な悪魔が多いですし。
彼等を含むデーモンを《Rakdos, Lord of Riots / 暴動の長、ラクドス》で早く召喚したり(そう、まさに「召喚」です!)、《Rakdos, the Showstopper / 名演撃、ラクドス》で相手の場にだけ甚大な被害を与えるのも強そう。というか、そっちの方が絶対面白いですね。ここまで書いてから気づきました(さすがに今から書き直すのは大変なので書き直しませんが)。
(簡潔かつ最高のフレーバーテキスト。カジュアルEDHの精神を体現しています)
エントリーNo.9《司令官イーシャ/Commander Eesha》
伝説のクリーチャー — 鳥(Bird) 兵士(Soldier)
飛行、プロテクション(クリーチャー)
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再び伝説のクリーチャーの登場です。
彼女(女性です)の特徴は、なんといってもRebecca Guayによるイラストの素晴らしさでしょう! Rebecca Guayのイラストはおっさん世代の人気がきわめて高いらしく、全カードのfoilを無限回収しているプレイヤーもいるくらいです(「なんでもいいけどよォ」「これはEDHの記事だぜ」)。
(Rebecca Guayによる《チャネル》の新規イラスト。イラストの繊細さ、儚さでは、マジック界で彼女に勝るイラストレーターはいません)
クリーチャーとしての能力はシンプルそのもの。「プロテクション(クリーチャー)」は、「ブロックされない」と同義です。となれば、パワーこそ低いものの、殴りジェネラルでいくべきでしょう。
採用する装備品は、基本的に《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》と同じ。
装備品以外では、二段攻撃を与える《Battle Mastery / 熟達した戦い》《Silverblade Paladin / 銀刃の聖騎士》《Ajani, Caller of the Pride / 群れの統率者アジャニ》等がよさそうです。
ジェネラルが場に残ってなんぼなので、プロテクション付与の《Mother of Runes / ルーンの母》《Giver of Runes / ルーンの与え手》《Devoted Caretaker / 献身的な世話人》《Reverent Mantra / 恭しきマントラ》や、除去の身代わりになってくれる《Hyena Umbra / ハイエナの陰影》《Felidar Umbra / フェリダーの陰影》《Mammoth Umbra / マンモスの陰》は必須。特に最後の二枚はそれぞれ魂絆と警戒を与えるので、ダメージレースを有利に進めることができます。
(※対象を取るプロテクション付与生物は、イーシャ自身の「プロテクション(クリーチャー)」に引っかかって対象に取れませんでした。代わりに《Gods Willing / 神々の思し召し》《Faith's Shield / 信仰の盾》《Brave the Elements / 精霊への挑戦》といった、プロテクション付与スペルを入れるのが正解です)
ある程度盤面で優位になったら《Armageddon / ハルマゲドン》《Ravages of War / 戦の惨害》《Cataclysm / 大変動》《Catastrophe / カタストロフィ》で土地を破壊して、反撃の芽を潰してしまいましょう。
《カタストロフィ》は全体除去モードも選べるので、不利な盤面になった際の仕切りなおしとしても使えます。相手の展開力が高い可能性を見越して、他にも全体除去を何枚か積むのもアリでしょう。
デッキとしては殴りジェネラルらしく「強化して殴る」のみ。これといった特色はなく、強さも並(か、それ以下)ですが、イラストの圧倒的な美麗さの前には強さなど些細なこと。
おっさん世代なら一度は使ってみたいジェネラルです。
というわけで、中編はここまで。
前編を書いた時点では前後編のつもりでしたが、一人分丸々書き直したせいで分量が増え、またも予定外の分割となりました。分割しても9000字越え。さすがに疲れますね……。
前編の告知ツイートをRTしてくださった方、ありがとうございました。ファボや感想も励みになります。
後編もなるべく早く書くつもりですので、引き続きRTと感想のほど、よろしくお願いいたします。
「最強の統率者は誰か?」あるいは「真のEDHの幕開け」(前編)
皆さん、こんばんは。統率者戦(以下、EDH)してますか?
公式から毎年構築済みセットが発売され、MF会場では専用ゾーンができるなど、世界的に日々人気が高まっているEDH。日本でもすっかりお馴染みとなり、大勢の人が遊んでいることと思います。
さて、そんな楽しいEDHですが、EDHプレイヤーなら誰でも一度はある疑問を抱いたことがあるはずです。
それとはすなわち、
――最強の統率者は誰か。
というわけで、この記事ではこの究極の問いに答えを出すべく、「最強候補」を一人ずつデッキ構築と共に紹介しながら、検証を行っていきたいと思います。
さて、最強候補たちを挙げて議論する前に、まずしておかなければならないことがあります。
大前提の確認です。
議論の前には認識の摺り合わせが不可欠。認識の齟齬はトラブルの元ですからね。
でもって、その大前提とは、
――統率者とは何か。
です。
「はあ? こいつ、いきなり何を言い出すんだ?」
そう思った方も多いと思います。「統率者=伝説のクリーチャー」。常識じゃないか、と。
ですが、常識ほど当てにならないものもありません。かのアインシュタインも言っています、「常識とは、十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことだ」と。
ここで一切の常識を捨てて、あらためてまっさらな頭で考えてみてください。
EDHにおける「統率者」は英語で「commander」。そして、マジックでは英語版の表記だけが正式なルール(オラクル)として認められます。
つまり、英語版のカード名に「commander」の文字が入っていないクリーチャーは、伝説であっても統率者ではありません。逆に、「commander」の文字さえ入っていれば、非伝説のクリーチャーでも統率者です。
古人曰く「名は体を表す」。幼稚園児どころかマローでも理解できる理屈ですね。
今、皆さんの目からは鱗がぽろぽろと落ちまくっていることでしょう。「最強はティムトラに決まってるだろ」などと思いながらこの記事を読み始めた人の中には、自分がEDHの素人(初心者未満)だったことを知って、愕然とされてる方も多いかと思います。
(自分を統率者だと思いこんでいる異常者たち)
さて、一切の問題なく無事認識の擦りあわせが終わったところで、さっそく最強候補たる統率者たちを一挙に紹介したいと思います。
あとから「あの統率者が候補に入っていないのはおかしい!」とイチャモンをつけられるのもなんですので、この記事ではあえて全統率者を候補として検証します。
マジックは二十五年間続いているゲーム。毎年統率者セットも出ていますし、さぞや数多の統率者が犇めいていることでしょう。それを一人残らす紹介する! まさに前代未聞の記事と言えます。EDH新時代――「真のEDH」の幕開けに相応しい。
というわけで、さっそく全統率者のカード画像をご覧に入れましょう。
見よ! これがマジック二十五年の歴史が誇る統率者たちの姿だ!
す、少ない……。
こうして並ぶと一目瞭然ですが、なんとEDHで使用できる統率者は十三体しかいません! 二十五年でたったの十三体! ペースとしては二年で一体! 平成ライダーや歴代プリキュアの方が何倍も多いやんけ! 舐めとんか!
……っと、失礼、ウィザーズを罵っても詮無いですね。
とりあえず単色統率者が各色揃っているのには安心しましたが、多色はわずか二体のみ。しかも両方二色です。
なんとも寂しい話ですが、「自分をEDHだと思いこんでいるEDHとよく似た四人対戦フォーマット」と違い、「真のEDH」ではこれが普通なので、受け入れるしかありません(皆さん、ちゃんとついてきてくれてますか? まだまだ先は長いですよ?)。
さて、数の少なさを嘆いていても仕方ないので、ここからは個別に統率者とデッキの解説を行っていきたいと思います。
エントリーNo.1《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》
クリーチャー — ゴブリン(Goblin)
包囲攻撃の司令官が戦場に出たとき、赤の1/1のゴブリン(Goblin)・クリーチャー・トークンを3体生成する。
(1)(赤),ゴブリン1体を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。包囲攻撃の司令官はそれに2点のダメージを与える。
2/2
まずは環境唯一の赤単統率者の彼から。
古参プレイヤーには「ギャンコマ」の愛称でお馴染みですね。ドミナリアで再録されたので、最近始めたプレイヤーも見たことあるかと思います。
本体は5マナ2/2と貧弱ですし、ロード能力(自種族に+1/+1修正)もありませんが、2マナでゴブリン一体を2点ダメージに変換する能力は十分な強さ。自分自身も投げられるので、最低でも8点ダメージになります。
彼が統率者ならば、デッキは当然ゴブリンデッキ。
彼自身がトークン3体を引き連れてきますし、ゴブリンは《Dragon Fodder / ドラゴンの餌》《Goblin Assault / ゴブリンの突撃》等、トークン生成能力に優れたカードが多いので、単純な横並べから《Goblin King / ゴブリンの王》等のロード能力生物で強化して殴っていくことになりそうです。
特に《Goblin Rabblemaster / ゴブリンの熟練扇動者》《Legion Warboss / 軍勢の戦親分》《Krenko, Tin Street Kingpin / ブリキ通りの重鎮、クレンコ》を出せば瞬く間に盤面はゴブリンだらけになりますし、《Krenko, Mob Boss / 群衆の親分、クレンコ》まで追加すれば「ゴブリン倍々ゲーム」の始まりで勝利は目前。
また、ゴブリンが次々と出てくる性質上、《Purphoros, God of the Forge / 鍛冶の神、パーフォロス》でETBダメージを狙う戦略も非常に効果的。特にエルドレインで加入した《Torbran, Thane of Red Fell / 朱地洞の族長、トーブラン》や《Furnace of Rath / ラースの灼熱洞》等のダメージ倍増系カードを使えば、たちまちダメージ祭り開催です。
例えば「パーフォロス&トーブラン&ダメージ倍増系カード3枚」が場に出ている状態でギャンコマを唱えれば、それだけで一挙に128点ダメージ! 2枚でも64点+次のターンに順次トークンを投げつけているだけで全員倒せます。強いぞギャンコマ!
また、赤にはコイン投げをするカードが多く、 例えば《Goblin Assassin / ゴブリンの暗殺者》を出せば、EDHがたちまちコイン投げ大会に早変わり! 他にも面白いコイン投げカードは多岐に渡って存在します。
コイン投げカードを多数採用する際は、勝率を上げてくれる《Krark's Thumb / クラークの親指》の採用をお忘れなく。
(このカード、コインを弾く「親指」だから二回コイン投げられるんですね。知ってました?)
いずれにせよ、ゴブリンはカードの選択肢が非常に多いため、どう組んでも強くなりそうです。
なお、全統率者共通の注意点として一点だけ。種族デッキなら問答無用で入りそうな《Coat of Arms / 旗印》ですが、ご覧の通りこのカードで強化されるのは「場に出ている全てのクリーチャー」です。昔のカードにはよくあることですが、対戦相手の生物も強化してしまいます。
(強化されるのは自軍だけじゃない!)
そして、「真のEDH」は基本的に種族デッキ環境――つまり旗印を出すと、高確率で相手側の盤面もとんでもないことになるわけですね。
よって、旗印は採用を見送る方が賢明でしょう。
エントリーNo.2《待ち伏せ司令官/Ambush Commander》
クリーチャー — エルフ(Elf)
あなたがコントロールする森(Forest)は、緑の1/1のエルフ(Elf)・クリーチャーである。それは土地でもある。
(1)(緑),エルフを1体生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+3/+3の修整を受ける。
2/2
二番目は唯一の緑単統率者の彼。スカージ初出で再録もされていないため、古参プレイヤー以外での知名度はゼロに近いでしょう。
《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》のエルフ版といった趣ですが、こちらの能力はトークン生成ではなく、自分のすべての森をエルフ化するという派手なもの。緑単なので土地はだいたい森ですし、当然エルフデッキですから、彼を唱えれば場はエルフだらけ。すなわち、大エルフ祭りの始まりです。
例えばエルフの数分サイズアップする《頓着無き者/Heedless One》はとんでもないサイズになりますし、エルフの数分マナを出す《Priest of Titania / ティタニアの僧侶》《Wirewood Channeler / ワイアウッドの媒介者》《Elvish Guidance / エルフの案内》(《Gaea's Cradle / ガイアの揺籃の地》)からは膨大なマナが出ます。
有り余るマナを《Ezuri, Renegade Leader / 背教の主導者、エズーリ》《Kamahl, Fist of Krosa / クローサの拳カマール》《Tribal Unity / 部族の団結》辺りに注ぎこんで《踏み荒らし/Overrun》していくのが主な戦い方になりそうです。
もちろん、エルドラージ三柱や《Vorinclex, Voice of Hunger / 飢餓の声、ヴォリンクレックス》のようなファッティも楽々唱えられます。特に《Soul of the Harvest / 収穫の魂》等、生物を唱えるたびに誘発するドローエンジンを使えば、連鎖的にファッティを唱えることも可能。
パーマネントをライブラリーから直接場に出す《Primal Surge / 原初のうねり》のような豪快なスペルで、一気に圧倒的勢力を築くことも容易い。
ただし、土地が生物化するデッキの構造上、全体除去一発で文字通り全てを失ってしまいます。なので全除去が飛んでくる可能性がある場合は、常に2マナ立てておくことが必須となります(いざとなれば統率者自身を生贄に捧げて、土地を非エルフ化するため)。
単純に生物が全滅させられるのもキツいので、《Heroic Intervention / 英雄的介》《Wrap in Vigor / 活力の覆い》等、全体に破壊不能や再生を与えるカードを採用するに越したことはありません。備えあれば憂いなしです。
とにかく溢れんばかりのマナが出るデッキなので、重いパワーカードを連打して気持ちよくなりたいティミー(ファッティを好むプレイヤーの総称)にオススメの強ジェネラルかと思います。
(すごく楽しそう。守りたい、この笑顔!)
エントリーNo.3《Coralhelm Commander / 珊瑚兜の司令官》
クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) 兵士(Soldier)
Lvアップ(1)((1):この上にLv(level)カウンターを1個置く。Lvアップはソーサリーとしてのみ行う。)
2/2
Lv2-3:
飛行
3/3
Lv4+:
飛行
あなたがコントロールする他のマーフォーク(Merfolk)・クリーチャーは+1/+1の修整を受ける。
4/4
さて、続いて三人目です(皆さん、まだついてきてくれてますか? 私は早くも面倒くさくなってきました。書き始めたのをちょっと後悔しています……)。
ゴブリン、エルフと続いて、これまた人気種族のマーフォークの彼。エルドラージ覚醒が初出で、再録もされていないので、最近のプレイヤーには全く馴染みがないでしょう。それどころか「レベルアップって何? RPGかよ」と言われても文句は言えません。
さて、そんなちょっとかわいそうな彼ですが、統率者としてはなかなかのやり手です。レベルアップにマナこそ掛かるものの、キャストは2マナと軽いですし、ロード能力が持てるのは高評価。
マーフォークは《真珠三叉矛の達人/Master of the Pearl Trident》等のロードが結構いますし、信心数分トークンを出せる《波使い/Master of Waves》で一気に数を増やすこともできます。
また、対象の土地を島に変えられる《Spreading Seas / 広がりゆく海》《Tidal Warrior / 高潮の戦士》等を使えば、ロードが与える「島渡り」を活用できるのも見逃せません(なにせ「真のEDH」に青入り統率者は二人しかいませんからね。そのままではめったに渡れない……)。
他の種族と比べると、爆発力や全体強化力にこそ劣りますが、青は《Rhystic Study / リスティックの研究》《Mystic Remora》等の嫌がらせ置物――もとい、継続的なドローソースや、《Stroke of Genius / 天才のひらめき》等のドロースペルが豊富さ自慢。
また、《Counterspell / 対抗呪文》《Mana Drain / マナ吸収》を代表とする打ち消し呪文が使えるのも他の色にない利点です。致命的な呪文を弾けるのは青だけの特権でしょう。
加えて、《Control Magic / 支配魔法》を元祖とする、コントロール奪取呪文が使えるのも忘れてはなりません。特に統率者ダメージを狙ってくる統率者を奪ってしまえば、相手は何もできなくなります。《Gilded Drake / 金粉のドレイク》なら奪い返される手段も少なく万全(今まで何度こいつに泣かされたことか……)。
さらに、《Time Warp / 時間のねじれ》等の追加ターン呪文の存在も大きい。「このターンのフルアタックではまだ死なない」とタカを括っている相手を、追加ターンで倒して唖然とさせましょう。
トータルで見れば、他の統率者と遜色ないデッキパワーを持った統率者かと思います。
(あとこのイラスト、ものすごくカッコイイですね)
エントリーNo.4《Benalish Commander / ベナリアの司令官》
クリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)
ベナリアの司令官のパワーとタフネスはそれぞれ、あなたがコントロールする兵士(Soldier)の数に等しい。
待機X ― (X)(白)(白)、Xは0にはできない。
ベナリアの司令官が追放されている間にそれから時間(time)カウンターが取り除かれるたび、白の1/1の兵士クリーチャー・トークンを1体生成する。
*/*
四人目は、次元の混乱出身の彼。種族シナジーを考えると、二つの種族タイプを持っているのはかなりのメリットです。
さてこの彼、待機を前提としたカードですが……実はなんと、ルール上、統率者領域からは待機できません! 残念! はい、終わり! 解散!(待機できるのは「手札から」のみ)
……と言いたいところですが、ちょっと待ってください。
これに関しては今現在、待機持ちの統率者がいないことが原因で、今後待機持ちの統率者が刷られれば、「統率者領域からでも待機できる」ようルールが変更される可能性が高そうです(忍術も上忍術になりましたしね)。なので、ここではその前提で話を進めます(でないと悲しすぎるので)。
まず白の特長として、昔から全体強化系エンチャント、いわゆる「アンセム」の豊富さがあげられます。《Crusade / 十字軍》や《Glorious Anthem / 栄光の頌歌》ですね。《Jihad》なんてニッチなカード、ご存知ですか?
(敵がいなくなると生贄。今のご時世だとポリコレ的にカード化できるか怪しい)
統率者の能力がトークン生成なので、基本的にはこれまた横並べ&全体強化で殴る戦術がメインになりそうです。
白は《Raise the Alarm / 急報》等、赤と並んでトークン生成カードが多いことを踏まえると、すべてのトークンを4/4飛行の天使に変える《Divine Visitation / 神聖な訪問》が強そうです。特に《Secure the Wastes / 荒野の確保》《Decree of Justice / 正義の命令》等の大量トークン生成カードと組み合わせれば、たちまち盤面を天使で埋め尽くすことができます。生物が場に出るたび+1/+1カウンターが全軍に乗る《Cathars' Crusade / 聖戦士の進軍》も統率者と相性抜群ですね。
また、自分の全パーマネントに破壊不能を付与する《Avacyn, Angel of Hope / 希望の天使アヴァシン》さえ出せば、横並べデッキの弱点である全体除去を克服できます。それどころか、自分から全体除去を打つことさえ可能。全体除去ではなく《Armageddon / ハルマゲドン》系のカードならその時点で勝ったようなもの!
天使と言えば、自分の墓地の人間を全部釣り上げる《Angel of Glory's Rise / 栄光の目覚めの天使》も強力です。相手の生き物の起動型能力を封じる《Linvala, Keeper of Silence / 静寂の守り手、リンヴァーラ》も強烈無比。
雑な強さを求めるなら《Elesh Norn, Grand Cenobite / 大修道士、エリシュ・ノーン》が頭三つほど抜けているのは言を俟ちません。真のEDHは基本横並び環境なので、環境最強生物と呼んでも過言ではない。毎ゲーム必ず引きたい一枚です。いやマジで絶対常にハンドにほしい! 毎ゲーム常に唱えられる方法があったらいいのに!
…………。
うるさい! カード名に「commander」って書いてあるカードしか統率者にできないって言ってるだろ!
……失礼しました。幻聴が聞こえたもので。
総じて見ると、統率者こそそこまで強くないですが、白という色自体、構築の自由度が高く、そこそこやれそうなイメージです。
(ファイレクシア界のプリキュアの白い方。即除去られても仕事するので雑に強い。他の対戦相手がコピーすると残りの二人が悶絶する)
エントリーNo.5《Commander Greven il-Vec / 司令官グレヴェン・イル=ヴェク》
伝説のクリーチャー — 人間(Human) 戦士(Warrior)
畏怖(このクリーチャーは、黒でもアーティファクトでもないクリーチャーによってはブロックされない。)
司令官グレヴェン・イル=ヴェクが戦場に出たとき、クリーチャーを1体生け贄に捧げる。
7/5
さてさて、どんどんいきましょう。五番目に紹介するのは――
出ました! 伝説のクリーチャー!
マジック全盛期を知る古参プレイヤーには、説明する必要のない統率者でしょう。テンペストブロックにおける敵の将軍であり、数多くのカードでイラスト化された人気キャラクターです。威圧感に満ちたイラストが実に魅力的!
6マナと少々重く、生贄も要求しますが、サイズは堂々の7/5。
統率者戦において、パワー7は特別な意味を持ちます(三回殴れば統率者ダメージ21点で相手を倒せるため)。おまけに回避能力までついているのですから、これはもう殴りジェネラル(統率者ダメージで勝ちを目指すデッキ)で行く一手です。
殴りジェネラルであるからには、なるべく早くキャストしたい。よって《Ancient Tomb / 古えの墳墓》等の2マナ土地や、《Mana Vault / 魔力の櫃》《Grim Monolith / 厳かなモノリス》等のマナアーティファクト、《Dark Ritual / 暗黒の儀式》系統の瞬間マナ加速は欠かせません。
最高の相棒は、キャスティングコストの黒マナをファイマナに変えてしまう《K'rrik, Son of Yawgmoth / ヨーグモスの息子、ケリク》でしょう。彼自身が無色4マナで出せますし、彼さえ出せばグレヴェンもたったの3マナで唱えられる。後続のカードもどんどん展開できます(すごい勢いでライフが減りますが)。
強化手段は主に装備品です。何より優先されるのは速攻と呪禁(被覆)を与える《Lightning Greaves / 稲妻のすね当て》《Swiftfoot Boots / 速足のブーツ》。殴りジェネラルの必須装備品です。
続いて+2/+2修正にプロテクションとおまけのついた各種「剣」シリーズ。特にドローつきの《Sword of Fire and Ice / 火と氷の剣》と、ライフゲインできる《Sword of Light and Shadow / 光と影の剣》《Sword of Light and Shadow / 光と影の剣》がよさそうです。プロテクションでブロックされないのは大きいので、雑に全部入れてもいいかもしれません。
黒はとにかくライフをリソースに変換するので、魂絆を与える《Shadowspear / 影槍》《Basilisk Collar / バジリスクの首輪》《Loxodon Warhammer / ロクソドンの戦槌》辺りもほしいところ。
変わり種としては、《Helm of the Host / 多勢の兜》でどんどんグレヴェンのコピーを増やしたり、《Grafted Exoskeleton / 生体融合外骨格》で感染一撃死を狙うのも面白いでしょう。
グレヴェンが各種武器を持って相手に殴り掛かるのは絵になりますね。EDHの醍醐味の一つです。
強化スペルのオススメは、グレヴェン自身のドアップが強烈な《Hatred / 憎悪》! 支払ったライフの数だけパワーが上がるので、14点払えばそれだけで一人倒せてしまいます。
お前の肉から皮膚を、骨から肉を引きはがしてやる。骨についてる肉片も全部こそげ落としてやる。それでもまだ十分じゃないんだ。
― グレヴェン・イル=ヴェクからジェラードへ
(見よ、この殺意に満ちた表情! フレーバーテキストも壮絶! ジェラード憎まれすぎでしょ……)
ちなみにこのグレヴェン、上司はスーパーパワハラ野郎だし、部下はピンチに寝首を掻こうとしてくる屑だしと、職場の人間関係に恵まれません。日頃の鬱憤を敵であるジェラードにぶつけたくなる気持ちもわからないではない。
(左:上司にパワハラ叱責されるグレヴェン氏。つらそう。
右:屑な部下を空中船からポイ捨てするグレヴェン氏)
閑話休題。
黒の最大の長所は、なんと言っても《Necropotence / ネクロポーテンス》等の、ライフをハンドリソースに変換する手段の豊富さです。最近ではライブラリートップから直接唱えられる《Bolas's Citadel / ボーラスの城塞》なんて化け物まで出てきました(《Sensei's Divining Top / 師範の占い独楽》? 知らない子ですね)。
また、黒は《Demonic Tutor / 悪魔の教示者》に代表されるサーチカードが目白押しで、局面に応じて必要なカードを持ってこられるのは特筆に値します。まあ、毎回最初にケリクを持ってきそうですけど……。ケリク、常に出したい一枚ですからね。毎ゲーム必ず唱えられる方法があったらいいのになあ。
…………。
だからうるせえ! カード名に「commander」って書いてあるカードしか(以下略)。
……失礼しました。幻聴が多い日ですね。気圧の問題でしょうか。
あと、殴りジェネラルデッキに共通する弱点として、「統率者のコントロールを奪われると何もできなくなる」があります。なのでコントロールを取り戻せる《Homeward Path / 家路》は必ず入れておきましょう。
というわけで、総合するとこれまた強いデッキかと思います。武器マシマシで単騎駆けは男のロマン! 闇の力で敵を一人ずつ屠っていきたい人にオススメの統率者です。
(息子といっても血は繋がってないみたいですね。ファイマナは悪い文明。滅ぼすしかない)
エントリーNo.6《Ramosian Commander / レイモス教の団長》
クリーチャー — 人間(Human) レベル(Rebel)
(6),(T):あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストが5以下のレベル(Rebel)・パーマネント・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
2/4
まだまだ続きます。六番目は――
なッ!? 貴様はレベル! まさか生きていたとは……!?
……失礼。あまりのことについ取り乱してしまいました。
レベル、懐かしいですね。最近のプレイヤーはまず知らないかと思います。何せ初出はメルカディアン・マスクス。もう二十年くらい前になりますから。
ご覧の通り、レベルという種族は、その大半が「自分よりマナコストの大きい同族をライブラリーから直接場に出す」能力を持っています。より強い仲間を呼んでくるイメージですね。
1マナのレベルが一体いれば、毎ターン「2マナ、3マナ、4マナ」とわらしべ長者的に横並べできるので、全体除去に滅法強い。当時のスタンやブロック構築(というフォーマットがあったのです)で大活躍しました。
ちなみにライバル的な「傭兵」という種族もいるのですが、そちらは自分よりマナコストの低い同族しか呼べないため、鳴かず飛ばずでした。残念ながら当然ですね。
(傭兵のボス。見た目はカッコイイんだけど……)
さて、そのレベルですが、そのレベルを語る上では外せないクリーチャーがいます。我らがおっさん世代のアイドル、《Lin Sivvi, Defiant Hero / 果敢な勇士リン・シヴィー》です!
見て頂けばわかるように、思わず我が目を疑うレベルの超絶美少女です。まさにマジック界の橋本環奈。《Thalia, Guardian of Thraben / スレイベンの守護者、サリア》が登場するまでは、白単の姫と言えば彼女を指しました。
反乱軍を先導する彼女は、マジック界のジャンヌ・ダルクです。某ソーシャルゲームに登場する日も近いでしょう。
レベルの代表といえば彼女ですが、残念ながら彼女には統率者の資格がないので、統率者にはできません。
前置きが長くなりました。本題に入りましょう。
彼を統率者にする以上、デッキは当然レベルデッキになります。
で、彼のレベルとしての評価ですが……ぶっちゃけ可もなく不可もなくですね。何せ4マナなのにリクルーター能力以外はバニラ。いわば中間管理職です。蛮族じみた外見とは裏腹に、上と下との板挟みで苦労してるんだと思います……。
基本的には《Benalish Commander / ベナリアの司令官》のときと同じく、横並べから「アンセム」系カードで全体強化プランがメインになります。
レベルには芸達者がいて、具体的には、レベルをリアニメイトできる《Ramosian Revivalist / レイモス教の復興論者》、戦闘中の生き物にダメージを与える《Ballista Squad / バリスタ班》、アタックされたときに自軍生物をアンタップする《Reveille Squad / 起床ラッパ隊》辺りがいますが、正直どれもパッとしません。昔のクリーチャーは弱いですからね。
唯一の例外は、自分へのダメージを全て軽減する《Cho-Manno, Revolutionary / 革命家チョー=マノ》で、これに《Pariah / 最下層民》を張れば、これが除去られない限りダメージでは負けません。
とはいえ、それで勝ちに繋がるわけでもなく……。
統率者としてははっきり言って最弱レベルです。レベル(リン・シヴィー)好き向けのファンデッキ止まり。
ですので、勝ち負けに関してはいっそ割り切って、エモさ第一にするのが良さそうです。
例えば重い天使をいっぱい入れて、「革命軍に天使たちが手を貸す」という状況を作るとか。絶望的な盤面で《Entreat the Angels / 天使への願い》トップとか熱い! リン・シヴィーに《Angelic Destiny / 天使の運命》を張って天使化するのもエモいですね。
そこまでするなら、いっそ《Serra the Benevolent / 慈悲深きセラ》等の美女マシマシにして、美女デッキにするのも一考でしょう(サリアを入れるとリン・シヴィーと喧嘩しそうですが……)。
(白単サークルの新たな姫。趣味は税金の取り立て。味方からも容赦なく取り立てる通称「マルサの女」。「権堂さん、息子さんにはお金ではなく、あなたのそのしぶとさこそを残すべきですわ」)
レベルは全員人間なので、人間の部族シナジーを軸にデッキを組むのも手かと思います。
最後に、レベルメインでいくならクリーチャーの起動コストを下げる《Heartstone / ハートストーン》は入れましょう。
と、ここでひとまず前半終了です。まさか前半だけで一万二千字越えるとは。さすがに疲れました……。
てか最初の予定では、統率者八体だったんですよね(四体目書いてから検索ミスに気づいた)。しかも、書いてるとアレコレ語りたいことが出てきて内容は増える一方。こんなネタ記事で一体何をマジになってるんだか……。
続きはなるべく早く書きます!
……と言いたいところですが、さすがに大変なのでその辺は皆様の反応次第。
面白いと思ったら感想呟くなりリツイートなりして頂けると幸いです。
マジック徹底討論・第一回「カードの禁止は許されるのか」
皆様こんばんは。
マジック・ザ・ギャザリングの様々な問題に関して討論を行うための番組「マジック徹底討論」の時間がやってまいりました。
記念すべき第一回目のテーマは、こちらです。
「カードの禁止は許されるのか」
というわけで、今回は禁止された当事者たちに、禁止カードの是非について語っていただきたいと思います。
それでは、当事者の皆様方をご紹介しましょう。
まずは、クリーチャーを代表して、1マナPWとも称された故《死儀礼のシャーマン》氏。
故《死儀礼のシャーマン》「…………」
続いて、スペルを代表して、ドロー付きマナ加速の二つ名を持つ故《ギタクシア派の調査》氏。
故《ギタクシア派の調査》「…………」
最後は、置物を代表して、刷られたこと自体が間違いとまで貶された故《頭蓋骨絞め》氏。
故《頭蓋骨絞め》「…………」
それでは、禁止カードを代表するお三方に、禁止カードの是非について語っていただきたいと思います。
皆様、ご自分達が禁止されたことについて、何か異論はございますか?
故《死儀礼のシャーマン》「…………」
故《ギタクシア派の調査》「…………」
故《頭蓋骨絞め》「…………」
ないようですね。
次回の「マジック徹底討論」の議題は「マローをレンガで殴り続けると死ぬのか」です。
お楽しみに。
(元ネタはこちら)
あの日。魔法。出会い。(あるいは『ドミニアへの招待/Welcome to Dominia』)
それはあまりに突然だった。
時を遡ること二十三年。当時の私は十二歳で、お調子者で、運動が好きで、ドラゴンボールとガンプラとテレビゲームを愛する、どこにでもいるごく普通の田舎の小学生だった。
お祖母ちゃん子だった私は、隣の市にある母方の実家によく自転車で遊びに行っていた。片道小一時間は掛かっていたと思う。今から思えばよくそんな距離を自転車移動していたものだ。元気だったのだ。小学生だったから。
母方の実家の近くには、個人経営の小さなおもちゃ屋があった。店名は「ひばりや」。広さは十五畳ほどで、通路は人一人がなんとか通れるくらい。天井に届くまで設置された棚には、幼児用のそれから男児女児用に至るまで、多種多様な玩具がびっしりと並べられていた。
その日、どういった目的で来店したかは覚えていない。
店の奥側にはゲームソフトを並べるガラスケースとレジが設置されており、そのガラスケースの上にそれはあった。
大袈裟に言うなれば、運命の出会いだった。
最初に私の目を捉えたのは、《ラースのドラゴン》のイラストだった。翼を丸めた格好のオレンジ色のドラゴンは、それまで私が知っていた「イラスト」とはあまりに異質だった。ドラゴンボールのかっこよさとも、SDガンダムのかっこよさとも、まるで懸け離れていた。大袈裟でなく「世界が違った」のだ。
《ラースのドラゴン》が描かれていたのは、テンペストのブースターボックスだった。その隣には、アイスエイジ、ホームランド、第四版、第五版、ミラージュ、ビジョンズ、ウェザーライト等のボックスが、これまた所狭しと並べられていた(というか、並べきれずにボックスが重ね置きされていた)。
《道化の帽子》《ルアゴイフ》《黒炭の魔除け》《シヴ山のドラゴン》《ワイルーリーの狼》《黒騎士》etc.
ボックスやパックに描かれた絵画風のイラストは、一瞬にして私を異世界へと引きこんだ。文字通り「魔法の世界」へ、だ。
出会いの伏線はあった。
空手家・佐竹雅昭のラジオ番組を通じて、「マジック・ザ・ギャザリング」というゲームの存在は知っていた。とても興味を引かれたが、ネットすら存在しない当時、田舎の小学生に海外製のカードゲームの情報を入手することは不可能に近かった(何せ「濃霧」を「(地の精霊)ノーム」と勘違いしていたくらいだ)。周囲にプレイヤーもいなかった。当時の私の中で「マジック」とは、「噂に聞く幻の(そして憧れの)カードゲーム」だったのだ。
だから即座にピンときた。「これがあの《マジック》だ!」と。
その瞬間の驚きと喜びを、どう表現すればいいだろう。
想像してもらいたい。
小学生の子供が、夢想していた幻のゲームにある日突然出会ったのだ。
そのイラストは彼にとっては未知の魅力に溢れ、パックの種類も考えていたよりずっと多かった。
彼が出会ったのは単なるゲームではなく、外国の雰囲気を纏った「広大な魔法の世界」そのものだったのだ。
もちろん、その場で購入を決めた。小学生だから、パックをいくつもは買えない。
店長のおっちゃんによるとパックには「スターターパック」と「ブースターパック」の二種類があり、マジック入門には前者が適しているとのことだった。
となれば買うパックはひとつだ。
《ラースのドラゴン》が描かれているテンペストしかない。
スターターを一つ買った。千五百円。
祖母の家でパックを開けた。
これまでの人生で一度もないくらいに胸を高鳴らせて。
ファーストインパクトは、匂いだった。
当時のカードは海外で印刷されていて、強烈なインク臭を伴っていた。
少しも不快には思わなかった。それどころか、遠い異国の空気を嗅いだ気がして、非常にドキドキしたのを覚えている。
次なる衝撃は、カードデザインだった。
何せ、マジックのカードを見たことすらなかったのだ。
各色ごとに意匠が異なる枠。インタラプト、ソーサリー、エンチャント、アーティファクト等の、見たことも聞いたこともない単語の数々。特に「○○の召喚」と書かれたクリーチャーカードは、たちまち私の心を別世界へといざなった。
それらは単なる「カード」ではなかった。
カード化された「魔術書」がそこにあった。
最初に惹かれたのは《ブラッド・ペット》だ。その不気味ながらも愛くるしい姿と名前が印象的だった。
だがそれ以上に、そして強烈に私を惹きつけたのは二枚のカードだ。
一枚は《ヴァティ・イル=ダル》。
彼はパックで唯一の多色カードだった。枠の金色が文字通り「黄金」に見えた。しかもカードタイプは、なんと、「レジェンドの召喚」である。
レジェンド! 伝説のクリーチャー!
その単語は子供心を掴んで放さないには余りある。
「こいつはきっと最強カードの一枚に違いない!」とまだルールも知らない私は思ったものだ。
もう一枚は忘れもしない《生ける屍》だ。
墓から蘇った死者(ゾンビ)が生者を埋葬しようとする不気味なイラスト。
カードテキストを読んで、その内容に納得した。まさにイラスト通りの効果だったからだ。
その効果とは、場の全クリーチャーと墓地の全クリーチャーとの置換。
すなわち、一発逆転である。
一発逆転。
この単語に胸を躍らせない男子小学生がいるだろうか?
いるわけがない。
かくして私は《生ける屍》の虜となった。
「このカードこそが最強の切り札!」
「どんなに不利でもこれさえ唱えれば勝てる!」
絶対的にそう確信し、《生ける屍》を唱えて大逆転する自分を何度も思い描いては、ほくそ笑んだ。
だが、その「奇跡の逆転大勝利!」を掴むには、大きな問題が二つあった。
デッキがないことではない(スターターのカードたちがそのままデッキである)。
一つ目は「ルールがややこしすぎてイマイチよくわからないこと」。
二つ目は「対戦相手がいないこと」だ。
一つ目はどうとでもなるが、二つ目は致命的だった。
対戦相手がいなければ対人ゲームはできない。
だが、幻のゲームと出会った、それも運命的な出会いを果たした少年が、たかがそれくらいの障害で魔法使いになることを諦めるはずもなく。
かくして私は、対戦相手を作ることから始めることになる……。
(長くなりすぎたので二回目に続きます)