【偽翻訳】ウォール街のプレインズウォーカー(A PlanesWalk Down Wall Street)

株で儲けるのは簡単だ。安く買って高く売る。私はこの方法で5万ドルを800ドルにした。

                ――とある個人投資家

 

 はるか昔――つまりまだマジックにアルファとベータしかなく、マイケル・J・フォックスが元気だった頃――マジックのカードは文字通り「ただのカード」だった。

 友達との気軽な遊び道具。新しくてエキサイティングなオモチャ。

 誰もスリーブなんてつけてなかったし、値段を気にしている人間もいなかった(そもそもシングルカードを売ってる店さえなかったんだ!)。

【訳註:マイケル・J・フォックスは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主役】

 

 だが時代の流れで世の中は様変わりした。ブラウン管モニターのパソコンは薄っぺらいスマホに進化し、デュエリストマガジンに一ヶ月遅れで載っていたデッキリストは即日全世界に配信されるようになり、不動産王のトランプは大統領に就任し、アルファのブラックロータスは10ドルから18万ドルにまで値上がった(そしてニキビ面のカード小僧はおっさんになった。なのにまだ憧れのホバーボードは発売されてない! なんてこった!)

【訳註・ホバーボードは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に出てくる道具。同作に出てくるビフ・タネンのモデルはトランプ。「なんてこった!(Great Scott!)」も同作で繰り返し使われる有名な台詞】。

 

 黎明期のマジックプレイヤーは「マナコスト」さえ気にしていればよかったが、現代のマジックプレイヤーは「購入コスト」(相場)も気にしなきゃいけない。それも新セットの発売前からだ!

 

 誰だってカードは安く買いたいし、高く売りたい。

 そして、できれば儲けたい(不動産投資で大儲けしたトランプのように)。

 

 儲けたいと考えるのは自然なことだ。ゴードン・ゲッコーは言っていた。「欲望は善である」と。

 【訳註:映画「ウォール街」の登場人物】

 

 儲けるためには投資する必要がある。

 それもなるべく上手に、安全に。

 

 では、そのためにはどんなカードを買うべきか(そう、ここからが本題だ!)。

 

 君がビフ・タネンなら話は簡単だ。デロリアンで過去に戻ってアルファやベータのパックやカードを買い漁ればいい。

【訳註:デロリアンは実在した車。「バック・トゥ」では改造されてタイムマシンになる。ビフ・タネンは過去の自分に未来の情報を教え、大富豪になった】

 

 だけど残念なことに、我々はビフ・タネンじゃないし、現実のデロリアンは空を飛ばない(もう2019年なのに!)。

 

 真っ先に思いつく投資先は新セットのカードだ。注目されていない(過小評価されている)カードを安く買う。後は十分値上がってから売ればいいだけ。楽勝だろう?

《タルモゴイフ/Tarmogoyf》の初動を覚えているか? 《搭載歩行機械/Hangarback Walker》や《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》は?

 2ドルのカードを100枚買って10ドルで全部売れば800ドルの儲けだし、20ドルで買って60ドルで売るなら4000ドルだ! これを繰り返せば第二のトランプになるのも夢じゃない!

 

 ……と言いたいところだが、世の中そうは甘くない。

 

 カードの強さはトッププロでさえ実際に使わないとわからないし、環境にも大きく左右される(現にカードパワーはバカ高な《ファイレクシアの抹消者/Phyrexian Obliterator》はスタンでほぼ使われなかった。なんてこった!)。

 万が一(実際にはもっと高確率だろうけど)予想を外した際は、最悪の場合大量のカードで焚き火をするハメにもなりかねない。

 

 つまり、この(賭博的な)投資方法はオススメしないってことだ。

 

 では、もう少し中期的な投資ならどうか。

 

 モダンやレガシーで活躍中で、カードパワー的に通常パックで再録される確率がまずないカードを買うんだ(例えば《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》や《否定の力/Force of Negation》)。

 

 こういったカードは、半年や一年単位でじわじわと値上がりが期待できるし、環境の変化で跳ね上がる可能性も高い(《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》を思い出してくれ!)。

 が、それでも再録リスクがあるし、だからこそ売るタイミングが難しい。

 

 常に再録(暴落)リスクに脅える生活は、精神衛生上よろしくない。これは一般的に想像されている以上に大きなマイナス要素だ(嘘だと思うなら一度やってみればいい)。

 

 なら、どういったカードに投資すればいいか。

 ここまで話せばもうおわかりだろう。

 

 そう、再録禁止カードだ!

 

 再録禁止カードは再録されない。

 投資先としては、この点が何より重要だ。

 

 特にオススメなのはデュアルランドだ。レガシーでは必須だし、EDHでも単色以外のデッキならまず入る。つまり需要が高い=値崩れしない。

 現にデュアルランドは長期的に値上がり続けている。

(再録禁止リストの撤廃? 訴訟リスクまであるウィザーズがわざわざそんなことをするとは思えない)

 

 何より重要なのは――これは知らない人が多いだろうし、ここだけのとっておきの秘密だが――再録禁止カードはデッキに入れて使えるってことだ!

 それも一生! 死ぬまで! 

 

(さあ皆さんご一緒に)なんてこった!!!!

 

 おっと、これは冗談で言ってるわけじゃない。

 真面目な話だ。

 

 例えば君がスタン専門のプレイヤーだったとする。

 使うカードは高くても50ドルくらい。なので二つ三つデッキを持てる。

 が、それらのカードの大半には賞味期限がある。約二年間。実際にはもっと短い。

 賞味期限がくれば、金銭的には紙屑も同然だ。使い倒していれば元は取れるが、手元には何も残らない。まるであの「お前はクビだ」の文字のように消えてしまう。なんてこった!【訳註:「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」にそういうシーンがある】

 

 が、これがデュアルランドなら話は別だ。デュアルランドに賞味期限はない。上で書いたように、一生使えるんだ! しかもいらなくなったら最低でも購入時のそれと近い値段で売れる!

 

 これって「実質タダ」ってことじゃないか?(おまけに儲かる可能性だってある!)

 

 このことは「お金がないから投資なんて無理」「デュアルランドは高いからスタンやモダンでいい」と思っているプレイヤーにこそ声を大にして伝えたい。

 

 デュアルランドは安い。

 

 もう一度言う。

 

 デュアルランドは安いんだ!(少なくともスタン専門のカードよりはずっと!)

 

 とはいえ、デュアルランド(や他の再録禁止カード)が複数必要なレガシーをいきなり始めることは難しいだろう。

 が、投資だと思いながら時間を掛けて揃えていくことならできるはずだ(なんならスタンはアリーナ専門にするとか、デッキを一つまでにするとかして)。

 あのキュートな渦巻きが描かれたカードが徐々に揃っていくのは気分がいいぞ!

 

 EDHはもっとオススメだ。EDHならデュアルランドは一枚ですむ。他の再録禁止カードも色々使える(何よりEDHは楽しい!)。《timetwister》があればデロリアンなしでも時間を巻き戻せるし(《概念泥棒/Notion Thief》にだけは注意しろよ! これはマジだぞ!)。

 

 再録禁止カードは大半が高額だ。単なる投資だと思うと買いづらいかもしれない。

 が、投資兼ゲーム用のカードだと思えば買いやすい。逆もまた然り。もちろんコレクション用として買うのもアリだ。

 

 投資に関する名著中の名著『ウォール街のランダムウォーカー』によれば、最良の投資方法は「インデックス投資」らしい。詳細は省くが、この投資方法は「世界経済は発展し続ける」という前提に成り立っている(なぜなら今までずっと発展しつづけてきたから!)。

 

 これはつまり、「世界経済の発展(人類の未来)を信じる」ということだ。

 

 再録禁止カードへの投資は、これと同じことだ。

 

 すなわち、「マジックの発展(未来)を信じる」ということ。

 

 これは新セットの過小評価カードを買い占めて売るのとはわけが違う。

 

 全然違うんだ。

 

 つまり、私がいいたいのはこういうことだ。

 

「投資するなら、マジックの未来に投資しろ」

 

 だってその方がマジックをより楽しめるし、何よりマジックのない人生なんて考えられないだろう?

 

(元記事――はありません。翻訳風の創作記事です)

【偽翻訳】誰がスタンを殺したのか?(Who Killed standard?)

Who killed Cock Robin? コマドリを殺したのは誰?
I, said the Sparrow   それは私とスズメが言った 

 

 かつてセックス・ピストルズジョニー・ロットンは言った。

 

「ロックは死んだ」

 

 ロックンロールが死んだかはともかく、今のスタンは間違いなく「死んでいる」(あるいは「死亡している」「ご臨終されている」「この世を去っている」「事切れている」etc……)。【訳註:モンティ・パイソンのコント「死んだオウム」が元ネタ】

  もしサッチャーが生き返って今のスタン環境を見たなら、こう評するはずだ。「これは『故・スタンダード』だ」と。【訳註:英国首相サッチャーが演説で「死んだオウム」ネタを披露したことに掛けている】

 今のスタンは単に気絶しているわけではなく、生きるのをやめている。息絶え、神の元に帰ったのだ。

 

 では、誰がスタンを殺したのか?

 コマドリを殺したのはスズメだ。【訳註:冒頭にも掲げられているマザーグースの歌詞】ならば童謡のように、金の卵を産むガチョウが犯人なのか?

 半分はイエスだ。

 だがガチョウは従犯にすぎない。

 

 プレインズウォーカー・オーコ。

 

 主犯は彼だ。

 

 彼はガチョウの手を借りて2ターン目に着地する。そしてフードトークンを生めば忠誠値はなんと6だ! なんという硬さ。もう一撃では落としようがない。まだ2ターン目なのに!

 こんな目に遭ったなら、誰だってこう言いたくなるに決まっている。

 

そんなバカな!(nuts!)」と。

 

【訳註:「そんなバカな!」という慣用表現と食べ物のナッツ(木の実)を掛けている。nutsには「堅物」という意味もある】

 

 オーコがいる限り、ガチョウは毎ターンマナを生みだし続ける。しかもオーコを落とすために展開した生き物は、憐れにも狼にあっさりと食べられてしまう。おまけにフードトークンはすぐに3/3だ。こうなったらもう誰にも手出しできない。腹立ちのあまり「気が狂いそう!(nuts!)」だ。

 

  そんなオーコがはびこる環境を喜ぶ人間はいない。いるとしたらそいつは「頭のおかしい奴(nuts)」だ。スタンが死ぬのも当然というものだろう。

 

 ではどうすればスタンを《再活性/Reanimate》できるのか?

 答えは簡単だ。オーコを禁止にすればいい

 かくしてスタンに平和が戻ってきましたとさ。《めでたしめでたし/Happily Ever After》。

 

 ――と終われれば話は楽だが、現実はそうはいかない。

 

 何しろオーコは最新エキスパンションのトップレアだ。しかもPWはセットの顔でもある。

 考えてみてほしい。

 二年間使うつもりで4枚200ドルで買ったカードが、発売後一ヶ月やそこらで使えなくなったとしたら……。

 

 ユーザーたちは「頭がおかしくなって(nuts)」(ちょっとくどいかな?)ウィザーズ本社に殴りこみを掛けるに決まっている!

 

  ウィザーズだってそんな事態は望んでいないだろう(誰だって社長室に呼ばれたくはないしね) だからオーコが禁止されることはない(少なくともしばらくの間は)。

 

 だが次善策はある。苦肉の策だ。

 

 とりあえずガチョウを禁止してみるんだ。

 

 これで少なくとも2ターン目にオーコが着地することはない。緑系ミッドレンジの速度も低下する。ブン周り負けがなくなるだけでストレスは大幅に減るものだ。《めでたしめでたし/Happily Ever After》とまではいかないだろうが、この辺りが現実的な妥協点だろう。

 

 ただ、それでもスタンが死んだままの可能性はある。そうなったらオーコが殺されることもあるかもしれない。スタンが死に続けているよりはマシだからだ。

 

 そうなったらみんなで歌ってあげよう。

 

Who killed Oko, Thief of Crowns? オーコを殺したのは誰?
I, said WotC    それは私とウィザーズが言った

 

 

 

(元記事――はありません。翻訳風の創作記事です)