スタンダードを救う(かもしれない)たったひとつの冴えたやり方。

 皆さんご存じの通り(そして予想通り)、本日《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止されました。

 

「マジックは禁止カードがほぼ出ないから安心してカードを買える」という安全神話は今や昔。近年では頻繁な禁止やルール変更が常態化しています。

 その主な要因は、平均カードパワーの上昇と、MTGアリーナによる環境解析速度の急激な上昇。

 前者は、強力なカードを求める我々ユーザーの声に応えた結果ですし、後者は、開発側の人的時間的リソースを踏まえると、プレイテストではバランス調整に限界がある。

 どちらもTCGが本質的に抱えている構造的欠陥であり、ちょっとやそっとのことでは抜本的解決は望むべくない。

 となると、今後も現状のような禁止常態化が続いていくことになります。ですがそれは、メーカーにとっても、我々ユーザーにとっても喜ばしいことではありません。

 

 この問題に対し、現状を打開する画期的なソリューションはないのだろうか?

 

 そんな風に考えていたとき、ふとひらめきました。

 

「スタンダードにも7ポイントハイランダーのポイント制度を導入すればいいのではないか」と。

 

 大半の方がご存じないと思うので、まずは7ポイントハイランダーについてご説明します。

 7ポイントハイランダーはエターナルフォーマットの一つ。オーストラリア発祥で、オーストラリアではEDHより盛んなようです(公式サイトは→ 7 Point Highlanderyoutubeに対戦動画が色々あります)。

 

 フォーマットのルールは以下の通り。

 

・対戦は一対一。

・デッキ60枚のハイランダー戦(基本土地以外の同名カードは1種類につき1枚)。

・禁止カードはヴィンテージ準拠。

 

 これだけ見ると、ヴィンテージのようにパワー9が乱れ飛ぶゲームを想像しますが、そうはなりません。

 その理由は、フォーマット名にもなっている「7ポイント制度」。

 

 7ポイントハイランダーでは、パワー9やレガシー級の強カードには1~4点のポイントがつけられていて、デッキには合計で7点までのカードしか入れられません。

 具体的にはこんな感じ(1点は省略)。

 

 4点:Ancestral Recal Black Lotus Time Vault Time Walk

 3点:emonic Tutor Imperial Seal Mox Emerald Mox Jet Mox Pearl Mox Ruby Mox Sapphire Sol Ring Thassa’s Oracle Vampiric Tutor

 2点:Channel Dig Through Time Flash Mana Crypt Mind Twist Mystical Tutor Protean Hulk Strip Mine Tinker Tolarian Academy Treasure Cruise True-name Nemesis

 

 見てもらえばわかるように、最強の4点カードはデッキに2種類積めません。アンリコを積んだら3点のカードは1枚しか積めない。Time Vaultのような強コンボパーツを積むと各種教示者が積みづらい。という風に、「デッキに合ってる強いカード全部乗せ」ができないシステムになっています。

 

 この制度をスタンダードに導入するのです。

 

 例えば、仮にデッキのポイント合計を20点までにする。そして、特定のカードに以下のような点数をつける。

 

・王冠泥棒、オーコ  5点

・ウーロ       4点

・創造の座、オムナス 3点

・むかしむかし    2点

・ガチョウ      1点

・意地悪な狼     1点

(あくまで仮の点数です。他にも色々なカードに点数をつけます)

 

 こうすることにより、オーコを4枚積みした時点で、デッキにあっているウーロもむかしむかしもガチョウも狼も積めません。3枚積みだとガチョウ4枚は積めますが、ウーロやむかしむかしや狼は積めない。

 オーコを一切積まないとしても、ウーロとオムナスを両方4枚は積めません。デッキにあっている強いカードを全部入れることはできず、取捨選択を行う必要が出てきます。

 

 このポイント制度の利点は、禁止のように「オールorナッシング」ではないことです。どれほど強力カードであれ、ポイント設定を高くすることで、バランスを取ることができる。また、環境において、特定の色の組み合わせ(近年ならシミック)に強いカードが集まっても、問題が起こりづらい。

 さらに、同一アーキタイプでも固定スロットが生じづらくなり、「何を採用するか(しないか)」で個性が出ます。デッキの多様性も増える。多様性が増えれば環境最適解が出るまでに時間が掛かるのも好ましい。

 

 FNM等のカジュアルな大会であれば、「一番ポイントが低かったで賞」を用意して、カジュアルプレイヤー(あるいはファンデッカー)に楽しみを与えることもできます。

 

 難点を挙げるとすれば、各カードのポイント設定の難しさでしょう。

 

 どれにポイントを設定するか、何点にするかで環境は大きく変わります。

 ただ、禁止とは違い、ポイント設定に多少のミスがあったとしても、そう大きく問題にはならないかと思います。前述の通り「オールorナッシング」ではないからです。

 定期的、例えば二週間に一度ポイント改訂のタイミングを用意すれば、ほどよくバランスが取れるような気がします(この辺りは、実際に手探りでやってみるしかないでしょうが)。

 

 もうひとつは、周知性の難しさ。

 ポイント合計をチェックしてデッキを組むのは初心者にはハードルが高いでしょうし、「たまにFNMに出る」くらいの人だと、大会に参加しようと思ったらデッキが使えなくなっていた、という事態が起こりえます。

「こんなことをするくらいならナーフ(カードを弱体化させるエラッタ)で対応した方が早い」と思う人も出てくるでしょう(個人的にはナーフには反対ですが。他の問題が色々と出てきますし)。

 

 とまあ、ポイント制度の利点と欠点はこんなところでしょうか。

 マジック史上例を見ない大きなルール変更なので、現実問題として採用は難しいとは思います。

 ただ、現状を鑑みれば、これくらい大きなルール変更を行わない限り、ユーザーから不満のでない健全なゲーム環境を構築するのは難しいのではないか、とも思います。

 

 というか、日本でも7ポイントハイランダー流行りませんかね……。ポイント制度のおかげで禁止がヴィンテ準拠なのにパワー9を揃える必要がない(例えば「アンリコだけ積む」ことに合理性がある)ので、「パワー9揃えるのはキツいけどアンリコは打ちたい」みたいな人にうってつけだと思うのですが。