「最強の統率者は誰か?」あるいは「真のEDHの幕開け」(前編)

 皆さん、こんばんは。統率者戦(以下、EDH)してますか?

 公式から毎年構築済みセットが発売され、MF会場では専用ゾーンができるなど、世界的に日々人気が高まっているEDH。日本でもすっかりお馴染みとなり、大勢の人が遊んでいることと思います。

 さて、そんな楽しいEDHですが、EDHプレイヤーなら誰でも一度はある疑問を抱いたことがあるはずです。

 それとはすなわち、

 

 ――最強の統率者は誰か。

 

 というわけで、この記事ではこの究極の問いに答えを出すべく、「最強候補」を一人ずつデッキ構築と共に紹介しながら、検証を行っていきたいと思います。

 

 さて、最強候補たちを挙げて議論する前に、まずしておかなければならないことがあります。

 大前提の確認です。

 議論の前には認識の摺り合わせが不可欠。認識の齟齬はトラブルの元ですからね。

 でもって、その大前提とは、

 

 ――統率者とは何か。

 

 です。

 

「はあ? こいつ、いきなり何を言い出すんだ?」

 

 そう思った方も多いと思います。「統率者=伝説のクリーチャー」。常識じゃないか、と。

 ですが、常識ほど当てにならないものもありません。かのアインシュタインも言っています、「常識とは、十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことだ」と。

 

 ここで一切の常識を捨てて、あらためてまっさらな頭で考えてみてください。

 EDHにおける「統率者」は英語で「commander」。そして、マジックでは英語版の表記だけが正式なルール(オラクル)として認められます

 つまり、英語版のカード名に「commander」の文字が入っていないクリーチャーは、伝説であっても統率者ではありません。逆に、「commander」の文字さえ入っていれば、非伝説のクリーチャーでも統率者です

 古人曰く「名は体を表す」。幼稚園児どころかマローでも理解できる理屈ですね

 今、皆さんの目からは鱗がぽろぽろと落ちまくっていることでしょう。「最強はティムトラに決まってるだろ」などと思いながらこの記事を読み始めた人の中には、自分がEDHの素人(初心者未満)だったことを知って、愕然とされてる方も多いかと思います。

 

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自分を統率者だと思いこんでいる異常者たち

 

 さて、一切の問題なく無事認識の擦りあわせが終わったところで、さっそく最強候補たる統率者たちを一挙に紹介したいと思います。

 あとから「あの統率者が候補に入っていないのはおかしい!」とイチャモンをつけられるのもなんですので、この記事ではあえて全統率者を候補として検証します

 マジックは二十五年間続いているゲーム。毎年統率者セットも出ていますし、さぞや数多の統率者が犇めいていることでしょう。それを一人残らす紹介する! まさに前代未聞の記事と言えます。EDH新時代――「真のEDH」の幕開けに相応しい。

 

 というわけで、さっそく全統率者のカード画像をご覧に入れましょう。

 

 見よ! これがマジック二十五年の歴史が誇る統率者たちの姿だ!

 

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 す、少ない……

 こうして並ぶと一目瞭然ですが、なんとEDHで使用できる統率者は十三体しかいません! 二十五年でたったの十三体! ペースとしては二年で一体! 平成ライダーや歴代プリキュアの方が何倍も多いやんけ! 舐めとんか!

 ……っと、失礼、ウィザーズを罵っても詮無いですね。

 とりあえず単色統率者が各色揃っているのには安心しましたが、多色はわずか二体のみ。しかも両方二色です。

 なんとも寂しい話ですが、「自分をEDHだと思いこんでいるEDHとよく似た四人対戦フォーマット」と違い、「真のEDH」ではこれが普通なので、受け入れるしかありません(皆さん、ちゃんとついてきてくれてますか? まだまだ先は長いですよ?)。

 

 さて、数の少なさを嘆いていても仕方ないので、ここからは個別に統率者とデッキの解説を行っていきたいと思います。

 

エントリーNo.1《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

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クリーチャー — ゴブリン(Goblin)

包囲攻撃の司令官が戦場に出たとき、赤の1/1のゴブリン(Goblin)・クリーチャー・トークンを3体生成する。
(1)(赤),ゴブリン1体を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。包囲攻撃の司令官はそれに2点のダメージを与える。

2/2

 

 まずは環境唯一の赤単統率者の彼から。

 古参プレイヤーには「ギャンコマ」の愛称でお馴染みですね。ドミナリアで再録されたので、最近始めたプレイヤーも見たことあるかと思います。

 本体は5マナ2/2と貧弱ですし、ロード能力(自種族に+1/+1修正)もありませんが、2マナでゴブリン一体を2点ダメージに変換する能力は十分な強さ。自分自身も投げられるので、最低でも8点ダメージになります。

 彼が統率者ならば、デッキは当然ゴブリンデッキ。

 彼自身がトークン3体を引き連れてきますし、ゴブリンは《Dragon Fodder / ドラゴンの餌》《Goblin Assault / ゴブリンの突撃》等、トークン生成能力に優れたカードが多いので、単純な横並べから《Goblin King / ゴブリンの王》等のロード能力生物で強化して殴っていくことになりそうです。

 特に《Goblin Rabblemaster / ゴブリンの熟練扇動者》《Legion Warboss / 軍勢の戦親分》《Krenko, Tin Street Kingpin / ブリキ通りの重鎮、クレンコ》を出せば瞬く間に盤面はゴブリンだらけになりますし、《Krenko, Mob Boss / 群衆の親分、クレンコ》まで追加すれば「ゴブリン倍々ゲーム」の始まりで勝利は目前。

 また、ゴブリンが次々と出てくる性質上、《Purphoros, God of the Forge / 鍛冶の神、パーフォロス》でETBダメージを狙う戦略も非常に効果的。特にエルドレインで加入した《Torbran, Thane of Red Fell / 朱地洞の族長、トーブラン》や《Furnace of Rath / ラースの灼熱洞》等のダメージ倍増系カードを使えば、たちまちダメージ祭り開催です。

 例えば「パーフォロス&トーブラン&ダメージ倍増系カード3枚」が場に出ている状態でギャンコマを唱えれば、それだけで一挙に128点ダメージ! 2枚でも64点+次のターンに順次トークンを投げつけているだけで全員倒せます。強いぞギャンコマ!

 また、赤にはコイン投げをするカードが多く、 例えば《Goblin Assassin / ゴブリンの暗殺者》を出せば、EDHがたちまちコイン投げ大会に早変わり! 他にも面白いコイン投げカードは多岐に渡って存在します。

 コイン投げカードを多数採用する際は、勝率を上げてくれる《Krark's Thumb / クラークの親指》の採用をお忘れなく。

 

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(このカード、コインを弾く「親指」だから二回コイン投げられるんですね。知ってました?)

 

 いずれにせよ、ゴブリンはカードの選択肢が非常に多いため、どう組んでも強くなりそうです。

 

 なお、全統率者共通の注意点として一点だけ。種族デッキなら問答無用で入りそうな《Coat of Arms / 旗印》ですが、ご覧の通りこのカードで強化されるのは「場に出ている全てのクリーチャー」です。昔のカードにはよくあることですが、対戦相手の生物も強化してしまいます。

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(強化されるのは自軍だけじゃない!)

 そして、「真のEDH」は基本的に種族デッキ環境――つまり旗印を出すと、高確率で相手側の盤面もとんでもないことになるわけですね。

 よって、旗印は採用を見送る方が賢明でしょう。

 

 エントリーNo.2《待ち伏せ司令官/Ambush Commander》

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クリーチャー — エルフ(Elf)

あなたがコントロールする森(Forest)は、緑の1/1のエルフ(Elf)・クリーチャーである。それは土地でもある。
(1)(緑),エルフを1体生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+3/+3の修整を受ける。

2/2

 

 二番目は唯一の緑単統率者の彼。スカージ初出で再録もされていないため、古参プレイヤー以外での知名度はゼロに近いでしょう。

《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》のエルフ版といった趣ですが、こちらの能力はトークン生成ではなく、自分のすべての森をエルフ化するという派手なもの。緑単なので土地はだいたい森ですし、当然エルフデッキですから、彼を唱えれば場はエルフだらけ。すなわち、大エルフ祭りの始まりです。

 例えばエルフの数分サイズアップする《頓着無き者/Heedless One》はとんでもないサイズになりますし、エルフの数分マナを出す《Priest of Titania / ティタニアの僧侶》《Wirewood Channeler / ワイアウッドの媒介者》《Elvish Guidance / エルフの案内》(《Gaea's Cradle / ガイアの揺籃の地》)からは膨大なマナが出ます。

 有り余るマナを《Ezuri, Renegade Leader / 背教の主導者、エズーリ》《Kamahl, Fist of Krosa / クローサの拳カマール》《Tribal Unity / 部族の団結》辺りに注ぎこんで《踏み荒らし/Overrun》していくのが主な戦い方になりそうです。

 もちろん、エルドラージ三柱や《Vorinclex, Voice of Hunger / 飢餓の声、ヴォリンクレックス》のようなファッティも楽々唱えられます。特に《Soul of the Harvest / 収穫の魂》等、生物を唱えるたびに誘発するドローエンジンを使えば、連鎖的にファッティを唱えることも可能。

 パーマネントをライブラリーから直接場に出す《Primal Surge / 原初のうねり》のような豪快なスペルで、一気に圧倒的勢力を築くことも容易い。

 ただし、土地が生物化するデッキの構造上、全体除去一発で文字通り全てを失ってしまいます。なので全除去が飛んでくる可能性がある場合は、常に2マナ立てておくことが必須となります(いざとなれば統率者自身を生贄に捧げて、土地を非エルフ化するため)。

 単純に生物が全滅させられるのもキツいので、《Heroic Intervention / 英雄的介》《Wrap in Vigor / 活力の覆い》等、全体に破壊不能や再生を与えるカードを採用するに越したことはありません。備えあれば憂いなしです。

  とにかく溢れんばかりのマナが出るデッキなので、重いパワーカードを連打して気持ちよくなりたいティミー(ファッティを好むプレイヤーの総称)にオススメの強ジェネラルかと思います。

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(すごく楽しそう。守りたい、この笑顔!)

 

エントリーNo.3《Coralhelm Commander / 珊瑚兜の司令官》

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クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) 兵士(Soldier)

Lvアップ(1)((1):この上にLv(level)カウンターを1個置く。Lvアップはソーサリーとしてのみ行う。)

2/2

Lv2-3:

飛行

3/3

Lv4+:

飛行
あなたがコントロールする他のマーフォーク(Merfolk)・クリーチャーは+1/+1の修整を受ける。

4/4

 

 さて、続いて三人目です(皆さん、まだついてきてくれてますか? 私は早くも面倒くさくなってきました。書き始めたのをちょっと後悔しています……)。

 ゴブリン、エルフと続いて、これまた人気種族のマーフォークの彼。エルドラージ覚醒が初出で、再録もされていないので、最近のプレイヤーには全く馴染みがないでしょう。それどころか「レベルアップって何? RPGかよ」と言われても文句は言えません。

 さて、そんなちょっとかわいそうな彼ですが、統率者としてはなかなかのやり手です。レベルアップにマナこそ掛かるものの、キャストは2マナと軽いですし、ロード能力が持てるのは高評価。

 マーフォークは《真珠三叉矛の達人/Master of the Pearl Trident》等のロードが結構いますし、信心数分トークンを出せる《波使い/Master of Waves》で一気に数を増やすこともできます。

 また、対象の土地を島に変えられる《Spreading Seas / 広がりゆく海》《Tidal Warrior / 高潮の戦士》等を使えば、ロードが与える「島渡り」を活用できるのも見逃せません(なにせ「真のEDH」に青入り統率者は二人しかいませんからね。そのままではめったに渡れない……)。

 他の種族と比べると、爆発力や全体強化力にこそ劣りますが、青は《Rhystic Study / リスティックの研究》《Mystic Remora》等の嫌がらせ置物――もとい、継続的なドローソースや、《Stroke of Genius / 天才のひらめき》等のドロースペルが豊富さ自慢。

 また、《Counterspell / 対抗呪文》《Mana Drain / マナ吸収》を代表とする打ち消し呪文が使えるのも他の色にない利点です。致命的な呪文を弾けるのは青だけの特権でしょう。

 加えて、《Control Magic / 支配魔法》を元祖とする、コントロール奪取呪文が使えるのも忘れてはなりません。特に統率者ダメージを狙ってくる統率者を奪ってしまえば、相手は何もできなくなります。《Gilded Drake / 金粉のドレイク》なら奪い返される手段も少なく万全(今まで何度こいつに泣かされたことか……)。

 さらに、《Time Warp / 時間のねじれ》等の追加ターン呪文の存在も大きい。「このターンのフルアタックではまだ死なない」とタカを括っている相手を、追加ターンで倒して唖然とさせましょう。

 トータルで見れば、他の統率者と遜色ないデッキパワーを持った統率者かと思います。

(あとこのイラスト、ものすごくカッコイイですね)

 

エントリーNo.4《Benalish Commander / ベナリアの司令官

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クリーチャー — 人間(Human) 兵士(Soldier)

ベナリアの司令官のパワーとタフネスはそれぞれ、あなたがコントロールする兵士(Soldier)の数に等しい。
待機X ― (X)(白)(白)、Xは0にはできない。
ベナリアの司令官が追放されている間にそれから時間(time)カウンターが取り除かれるたび、白の1/1の兵士クリーチャー・トークンを1体生成する。

*/*

 四人目は、次元の混乱出身の彼。種族シナジーを考えると、二つの種族タイプを持っているのはかなりのメリットです。

 さてこの彼、待機を前提としたカードですが……実はなんと、ルール上、統率者領域からは待機できません! 残念! はい、終わり! 解散!(待機できるのは「手札から」のみ)

 ……と言いたいところですが、ちょっと待ってください。

 これに関しては今現在、待機持ちの統率者がいないことが原因で、今後待機持ちの統率者が刷られれば、「統率者領域からでも待機できる」ようルールが変更される可能性が高そうです(忍術も上忍術になりましたしね)。なので、ここではその前提で話を進めます(でないと悲しすぎるので)。

 まず白の特長として、昔から全体強化系エンチャント、いわゆる「アンセム」の豊富さがあげられます。《Crusade / 十字軍》や《Glorious Anthem / 栄光の頌歌》ですね。《Jihad》なんてニッチなカード、ご存知ですか?

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(敵がいなくなると生贄。今のご時世だとポリコレ的にカード化できるか怪しい)

 

 統率者の能力がトークン生成なので、基本的にはこれまた横並べ&全体強化で殴る戦術がメインになりそうです。

 白は《Raise the Alarm / 急報》等、赤と並んでトークン生成カードが多いことを踏まえると、すべてのトークンを4/4飛行の天使に変える《Divine Visitation / 神聖な訪問》が強そうです。特に《Secure the Wastes / 荒野の確保》《Decree of Justice / 正義の命令》等の大量トークン生成カードと組み合わせれば、たちまち盤面を天使で埋め尽くすことができます。生物が場に出るたび+1/+1カウンターが全軍に乗る《Cathars' Crusade / 聖戦士の進軍》も統率者と相性抜群ですね。

 また、自分の全パーマネントに破壊不能を付与する《Avacyn, Angel of Hope / 希望の天使アヴァシン》さえ出せば、横並べデッキの弱点である全体除去を克服できます。それどころか、自分から全体除去を打つことさえ可能。全体除去ではなく《Armageddon / ハルマゲドン》系のカードならその時点で勝ったようなもの!

 天使と言えば、自分の墓地の人間を全部釣り上げる《Angel of Glory's Rise / 栄光の目覚めの天使》も強力です。相手の生き物の起動型能力を封じる《Linvala, Keeper of Silence / 静寂の守り手、リンヴァーラ》も強烈無比。

 雑な強さを求めるなら《Elesh Norn, Grand Cenobite / 大修道士、エリシュ・ノーン》が頭三つほど抜けているのは言を俟ちません。真のEDHは基本横並び環境なので、環境最強生物と呼んでも過言ではない。毎ゲーム必ず引きたい一枚です。いやマジで絶対常にハンドにほしい! 毎ゲーム常に唱えられる方法があったらいいのに!

 …………。

 うるさい! カード名に「commander」って書いてあるカードしか統率者にできないって言ってるだろ!

 ……失礼しました。幻聴が聞こえたもので。

 総じて見ると、統率者こそそこまで強くないですが、白という色自体、構築の自由度が高く、そこそこやれそうなイメージです。

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(ファイレクシア界のプリキュアの白い方。即除去られても仕事するので雑に強い。他の対戦相手がコピーすると残りの二人が悶絶する)

 

エントリーNo.5《Commander Greven il-Vec / 司令官グレヴェン・イル=ヴェク

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伝説のクリーチャー — 人間(Human) 戦士(Warrior)

畏怖(このクリーチャーは、黒でもアーティファクトでもないクリーチャーによってはブロックされない。)
司令官グレヴェン・イル=ヴェクが戦場に出たとき、クリーチャーを1体生け贄に捧げる。

7/5

 

 さてさて、どんどんいきましょう。五番目に紹介するのは――

 出ました! 伝説のクリーチャー!

 マジック全盛期を知る古参プレイヤーには、説明する必要のない統率者でしょう。テンペストブロックにおける敵の将軍であり、数多くのカードでイラスト化された人気キャラクターです。威圧感に満ちたイラストが実に魅力的!

 6マナと少々重く、生贄も要求しますが、サイズは堂々の7/5。

 統率者戦において、パワー7は特別な意味を持ちます(三回殴れば統率者ダメージ21点で相手を倒せるため)。おまけに回避能力までついているのですから、これはもう殴りジェネラル(統率者ダメージで勝ちを目指すデッキ)で行く一手です。

 殴りジェネラルであるからには、なるべく早くキャストしたい。よって《Ancient Tomb / 古えの墳墓》等の2マナ土地や、《Mana Vault / 魔力の櫃》《Grim Monolith / 厳かなモノリス》等のマナアーティファクト、《Dark Ritual / 暗黒の儀式》系統の瞬間マナ加速は欠かせません。

 最高の相棒は、キャスティングコストの黒マナをファイマナに変えてしまう《K'rrik, Son of Yawgmoth / ヨーグモスの息子、ケリク》でしょう。彼自身が無色4マナで出せますし、彼さえ出せばグレヴェンもたったの3マナで唱えられる。後続のカードもどんどん展開できます(すごい勢いでライフが減りますが)。

 強化手段は主に装備品です。何より優先されるのは速攻と呪禁(被覆)を与える《Lightning Greaves / 稲妻のすね当て》《Swiftfoot Boots / 速足のブーツ》。殴りジェネラルの必須装備品です。

 続いて+2/+2修正にプロテクションとおまけのついた各種「剣」シリーズ。特にドローつきの《Sword of Fire and Ice / 火と氷の剣》と、ライフゲインできる《Sword of Light and Shadow / 光と影の剣》《Sword of Light and Shadow / 光と影の剣》がよさそうです。プロテクションでブロックされないのは大きいので、雑に全部入れてもいいかもしれません。

 黒はとにかくライフをリソースに変換するので、魂絆を与える《Shadowspear / 影槍》《Basilisk Collar / バジリスクの首輪》《Loxodon Warhammer / ロクソドンの戦槌》辺りもほしいところ。

 変わり種としては、《Helm of the Host / 多勢の兜》でどんどんグレヴェンのコピーを増やしたり、《Grafted Exoskeleton / 生体融合外骨格》で感染一撃死を狙うのも面白いでしょう。

 グレヴェンが各種武器を持って相手に殴り掛かるのは絵になりますね。EDHの醍醐味の一つです。

 強化スペルのオススメは、グレヴェン自身のドアップが強烈な《Hatred / 憎悪》! 支払ったライフの数だけパワーが上がるので、14点払えばそれだけで一人倒せてしまいます。

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お前の肉から皮膚を、骨から肉を引きはがしてやる。骨についてる肉片も全部こそげ落としてやる。それでもまだ十分じゃないんだ。

― グレヴェン・イル=ヴェクからジェラードへ

 

(見よ、この殺意に満ちた表情! フレーバーテキストも壮絶! ジェラード憎まれすぎでしょ……)

 

 ちなみにこのグレヴェン、上司はスーパーパワハラ野郎だし、部下はピンチに寝首を掻こうとしてくる屑だしと、職場の人間関係に恵まれません。日頃の鬱憤を敵であるジェラードにぶつけたくなる気持ちもわからないではない

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(左:上司にパワハラ叱責されるグレヴェン氏。つらそう。

 右:屑な部下を空中船からポイ捨てするグレヴェン氏)

 閑話休題

 黒の最大の長所は、なんと言っても《Necropotence / ネクロポーテンス》等の、ライフをハンドリソースに変換する手段の豊富さです。最近ではライブラリートップから直接唱えられる《Bolas's Citadel / ボーラスの城塞》なんて化け物まで出てきました(《Sensei's Divining Top / 師範の占い独楽》? 知らない子ですね)。

 また、黒は《Demonic Tutor / 悪魔の教示者》に代表されるサーチカードが目白押しで、局面に応じて必要なカードを持ってこられるのは特筆に値します。まあ、毎回最初にケリクを持ってきそうですけど……。ケリク、常に出したい一枚ですからね。毎ゲーム必ず唱えられる方法があったらいいのになあ。

 …………。

 だからうるせえ! カード名に「commander」って書いてあるカードしか(以下略)。

 ……失礼しました。幻聴が多い日ですね。気圧の問題でしょうか。

 あと、殴りジェネラルデッキに共通する弱点として、「統率者のコントロールを奪われると何もできなくなる」があります。なのでコントロールを取り戻せる《Homeward Path / 家路》は必ず入れておきましょう。

 というわけで、総合するとこれまた強いデッキかと思います。武器マシマシで単騎駆けは男のロマン! 闇の力で敵を一人ずつ屠っていきたい人にオススメの統率者です。

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 (息子といっても血は繋がってないみたいですね。ファイマナは悪い文明。滅ぼすしかない)

 

エントリーNo.6《Ramosian Commander / レイモス教の団長

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クリーチャー — 人間(Human) レベル(Rebel)

(6),(T):あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストが5以下のレベル(Rebel)・パーマネント・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

2/4

 

 まだまだ続きます。六番目は――

 なッ!? 貴様はレベル! まさか生きていたとは……!?

 ……失礼。あまりのことについ取り乱してしまいました。

 レベル、懐かしいですね。最近のプレイヤーはまず知らないかと思います。何せ初出はメルカディアン・マスクス。もう二十年くらい前になりますから。

 ご覧の通り、レベルという種族は、その大半が「自分よりマナコストの大きい同族をライブラリーから直接場に出す」能力を持っています。より強い仲間を呼んでくるイメージですね。

 1マナのレベルが一体いれば、毎ターン「2マナ、3マナ、4マナ」とわらしべ長者的に横並べできるので、全体除去に滅法強い。当時のスタンやブロック構築(というフォーマットがあったのです)で大活躍しました。

 ちなみにライバル的な「傭兵」という種族もいるのですが、そちらは自分よりマナコストの低い同族しか呼べないため、鳴かず飛ばずでした。残念ながら当然ですね。

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(傭兵のボス。見た目はカッコイイんだけど……)

 

 さて、そのレベルですが、そのレベルを語る上では外せないクリーチャーがいます。我らがおっさん世代のアイドル、《Lin Sivvi, Defiant Hero / 果敢な勇士リン・シヴィー》です!

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 見て頂けばわかるように、思わず我が目を疑うレベルの超絶美少女です。まさにマジック界の橋本環奈。Thalia, Guardian of Thraben / スレイベンの守護者、サリア》が登場するまでは、白単の姫と言えば彼女を指しました。

 反乱軍を先導する彼女は、マジック界のジャンヌ・ダルクです。某ソーシャルゲームに登場する日も近いでしょう。

 レベルの代表といえば彼女ですが、残念ながら彼女には統率者の資格がないので、統率者にはできません。

 

 前置きが長くなりました。本題に入りましょう。

 彼を統率者にする以上、デッキは当然レベルデッキになります。

 で、彼のレベルとしての評価ですが……ぶっちゃけ可もなく不可もなくですね。何せ4マナなのにリクルーター能力以外はバニラ。いわば中間管理職です。蛮族じみた外見とは裏腹に、上と下との板挟みで苦労してるんだと思います……。

 基本的には《Benalish Commander / ベナリアの司令官》のときと同じく、横並べから「アンセム」系カードで全体強化プランがメインになります。 

 レベルには芸達者がいて、具体的には、レベルをリアニメイトできる《Ramosian Revivalist / レイモス教の復興論者》、戦闘中の生き物にダメージを与える《Ballista Squad / バリスタ班》、アタックされたときに自軍生物をアンタップする《Reveille Squad / 起床ラッパ隊》辺りがいますが、正直どれもパッとしません。昔のクリーチャーは弱いですからね。

 唯一の例外は、自分へのダメージを全て軽減する《Cho-Manno, Revolutionary / 革命家チョー=マノ》で、これに《Pariah / 最下層民》を張れば、これが除去られない限りダメージでは負けません。

 とはいえ、それで勝ちに繋がるわけでもなく……。

 統率者としてははっきり言って最弱レベルです。レベル(リン・シヴィー)好き向けのファンデッキ止まり。

 ですので、勝ち負けに関してはいっそ割り切って、エモさ第一にするのが良さそうです。

 例えば重い天使をいっぱい入れて、「革命軍に天使たちが手を貸す」という状況を作るとか。絶望的な盤面で《Entreat the Angels / 天使への願い》トップとか熱い! リン・シヴィーに《Angelic Destiny / 天使の運命》を張って天使化するのもエモいですね。

 そこまでするなら、いっそ《Serra the Benevolent / 慈悲深きセラ》等の美女マシマシにして、美女デッキにするのも一考でしょう(サリアを入れるとリン・シヴィーと喧嘩しそうですが……)。

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(白単サークルの新たな姫。趣味は税金の取り立て。味方からも容赦なく取り立てる通称「マルサの女。「権堂さん、息子さんにはお金ではなく、あなたのそのしぶとさこそを残すべきですわ」)

 レベルは全員人間なので、人間の部族シナジーを軸にデッキを組むのも手かと思います。

 最後に、レベルメインでいくならクリーチャーの起動コストを下げる《Heartstone / ハートストーン》は入れましょう。

 

 

 と、ここでひとまず前半終了です。まさか前半だけで一万二千字越えるとは。さすがに疲れました……。

 てか最初の予定では、統率者八体だったんですよね(四体目書いてから検索ミスに気づいた)。しかも、書いてるとアレコレ語りたいことが出てきて内容は増える一方。こんなネタ記事で一体何をマジになってるんだか……。

 続きはなるべく早く書きます!

 ……と言いたいところですが、さすがに大変なのでその辺は皆様の反応次第。

 面白いと思ったら感想呟くなりリツイートなりして頂けると幸いです。